サッカー界のサラブレット「世界注目の2世選手」を厳選 バルサやレアルの英雄ずらり、“大人の事情”も?【現地発コラム】

バルサなどで活躍をしたロナウジーニョ【写真:Getty Images】
バルサなどで活躍をしたロナウジーニョ【写真:Getty Images】

スペインで頂点を目指す有望株たちに注目、ロナウジーニョ息子の加入に賛否

 10代20代のサッカーファンにとっては同年代の目指すべき指標、オールドファンにはその苗字や遺伝子を引き継ぐ風貌から、かつての熱狂を思い出させる存在がいる。プロサッカー選手として成功した父親を持ち、その足跡を追っている子供たちだ。サッカーの本場の1つであるスペインで、ピラミッドの頂点へ向けて駆け上がろうとしているサラブレッドたちをまとめた。

 今年3月、FCバルセロナは元ブラジル代表FWロナウジーニョの息子、ジョアン・メンデスの下部組織入団を発表した。2005年2月生まれの18歳。2月からおよそ1か月のテスト期間を経て入団が決まり、サインの際にはクラブ下部組織の責任者のほか、ロナウジーニョの兄で代理人、自身は選手として札幌などでプレーしたロベルト・デ・アシス氏らが同席した。

 メンデスは今季ユースAチームに所属し、ヨーロッパやバルサのスタイルへの対応を目指すという。父親と少し違うのはセンターフォーワードタイプだということ。ただし攻撃的なポジションならどこでもこなし、両足を高いレベルで使える器用さがあるという。

 バルサファンの間ではメンデスの入団を好意的に受け止められてる一方、ジョアン・ラポルタ会長の肝煎りですべてが決まったとの見方が一部にあることも事実。初めて会長を務めた当時にチームを牽引して黄金時代を迎えた看板選手への義理立て、さらには元選手となった父親がバルサにいる機会が増え、クラブ行事に登場すれば宣伝効果が高まるという“大人の事情”が息子の下部組織入団に関係しているのでは、との声もある。

元フランス代表MFピレスの息子は新たな挑戦、バレンシアに揃う2世選手たち

 2世の入団テスト情報はほかにもあり、元フランス代表でアーセナル(イングランド)などで活躍した元フランス代表MFロベール・ピレスの長男、テオ(15歳)がビジャレアル・ジュニアユースのテストを受けている。この少年は父親がアーセナルのコーチを務めていた7年ほど前には同クラブ下部組織にいたが、その後家族で移住したイビサ島で改めてキャリアをスタート。自身の成長に伴い父親が所属した別のクラブでさらなるステップアップを目指すことになった。

 そのお隣のクラブ、バレンシアでは日本の国会議員や歌舞伎界のように2世が揃っている。元オランダ代表FWパトリック・クライファートの子供、FWジャスティン・クライファート(23歳)がいるし、MFニコ・ゴンサレス(21歳)の父は元スペイン代表で2000年代前半スペイン代表だけでなく欧州でも強さを発揮したデポルティーボ・ラ・コルーニャ(通称スーペル・デポル)の象徴的な存在だった。

 またサイドアタッカーのFWフラン・ペレス・マルティネス(20歳)と左サイドバックのDFへスース・バスケス(20歳)の父親は順にルフェテとブラウリオで、両者は元プロ選手ではあるが、共通点はバレンシアでスポーツディレクターを務めた実績がある。後者は現在オサスナで同職を務めている。

 以上4選手は20歳そこそこでトップチームに所属、途中出場が多いものの最上級カテゴリーでプレー時間を重ねているだけに、プロとして順調にステップアップしていると言っていい。同クラブ下部組織では2000年代前半にキャプテンを務めたMFダビド・アルベルダの同名の息子(12歳)が先輩たちに続くべくプレーしている。

大選手のDNAが集まるレアル、名手の子供たちが各世代でプレー

 もっとも大選手の遺伝子を受け継ぐ卵たちが最も多く集まっているのは、言うまでもなくレアル・マドリードだ。

 スペインが2010年の南アフリカ・ワールドカップ(W杯)で世界チャンピオンになった時の守護神、GKイケル・カシージャスの息子、マルティン(8歳)がU-9のベンハミンBに所属しており、そのチームメイトには元同クラブ所属MFハビエル・バルボアの子供もいる。また元ブラジル代表DFマルセロの子供、エンソ・アウヴェス・ビエイラ(13歳)はU-14のインファンティルAでストライカーとして活躍。その上のU-16カテゴリー、カデテのAチームには急逝した元スペイン代表MF、ホセ・アントニオ・レジェスの子供がプレーしている。

 さらに上となると、現在は負傷離脱中だが元バレンシアのGKサンティ・カニサレスの子、ルーカスが同じくGKでカスティージャまで辿り着いている。ほかにはアスレティック・ビルバオの看板選手だったMFジューレン・ゲレーロの息子、ジューレン・ヨン・ゲレーロ(19歳)は昨年末まで6シーズンにわたりレアル下部組織に所属し、今年1月から本格的なステップアップのため3部リーグに相当するクラブへレンタル移籍している。元フランス代表MFのジネディーヌ・ジダンは4人の息子たち(※)と、3世代続けてアイスランド代表のグジョンセンも複数の息子たちがレアル下部組織所属を経て最後のステップへ挑戦している。

 プロになるのはほんの一握りというサッカー界で、これらすべての若者たちが目標を達成するとは考えにくい。世界的に知られる存在だった父親を凌ぐとなれば、その可能性は必然的に低くなる。それでも幼い頃から夢の舞台が身近にある環境で成長し、成功体験に近い感覚を持ち続けているのは大きな利点だ。家族の希望や期待を背負って戦うのは多くの選手たちに共通するものではあるのだろうが、家族の繋がりというサイドストーリーが垣間見えるのが彼らならではなのかもしれない。

※長男のエンソ(MF)はレアルのカスティージャを経て、現在はスペイン3部リーグに相当するプリメーラ・フェデラシオンのフエンラブラダに所属。次男ルカ(GK)は2部エイバルで守護神となり、三男テオ(DF)はレアルのカスティージャ、四男エリアス(MF)はレアルのユースBチームにそれぞれ所属している。

(島田 徹 / Toru Shimada)



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島田 徹

1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。

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