第2次森保ジャパン、三笘起用で弊害? 鎌田トップ下は無謀?…初陣で見えた「3つの課題」

主な3つの問題点とは?【写真:徳原隆元】
主な3つの問題点とは?【写真:徳原隆元】

【識者コラム】ウルグアイ戦で見えた主な3つの問題点をピックアップ

 日本代表はカタール・ワールドカップ(W杯)後も続投が決まった森保一監督の下、2026年の北中米W杯に向け新たな船出を切った。その初陣となったキリンチャレンジカップのウルグアイ戦では、先制を許しながらも後半に追い付き、1-1のドロー発進に。W杯で初のベスト8進出という目標を叶えるべくスタートしたなか、第2次森保ジャパンには一体、どんな課題が見えたのか。ここでは主な3つの問題点を挙げ、それぞれに焦点を当てる。

■ビルドアップの基準

 カタールW杯で出た課題として、森保監督は高い位置でボールを奪ってのカウンターは通用したが、それができない時に相手のプレスを回避して、いかにボールを前に運んでいくかを大きなテーマの1つとして挙げた。いわゆる“ポゼッション”と呼ばれるところだが、これまで選手のその場、その場の判断にある程度任せるところが多かった部分で、チームとしての設計をはっきりして、立ち位置やパスルートを組織として作ってチャンスにつなげるということだ。

 おそらく名波浩コーチを中心に、試合前から具体的にサイドバックがボランチの脇に入ったり、逆にボランチがセンターバックの間や脇に落ちたり、それらを同時に組み合わせたりと、いくつかのメカニズムを選手に伝えて、2日間の戦術練習で落とし込んだはずだ。ウルグアイ戦ではそれが目的化したところもあり、攻撃の矢印が前に向き切らない時間帯が目立った。

 そうした“ジレンマ”がシュート4本という記録にも表れたなかで、前半12分に左から三笘薫、瀬古歩夢、守田英正、伊藤洋輝が絡んで浅野拓磨がワイドに抜け出したシーン、同30分に守田が三笘に当てて伊藤が抜け出すシーンなど、狙いが形になったシーンもあった。ただ、右サイドは菅原由勢と堂安律のところで狭い局面になり、ウルグアイの守備に捕まってしまうシーンが多く、中央から鎌田大地が前向きにボールを持つシーンが非常に少なかった。

 ウルグアイのディフェンスが間延びしてきた終盤には途中から入った伊東純也や西村拓真の推進力がそのまま発揮されたが、そうした時間帯になれば縦に速い攻撃が効果的なのは今回のシリーズに始まったことではない。前半の段階からでも速攻と遅攻の使い分けをできるようになるのが理想だが、スタートとしては新たなトライをして課題を共有したことに意味がある。

三笘や伊東のような個の力を戦術的な構築にどう融合するかが大きなテーマに

■三笘薫の生かし方

 三笘が最大のストロングポイントであることは誰が見ても明らかだろう。シンプルに彼の突破力を生かすことができれば、前半からもっとチャンスが生まれたかもしれない。しかし、うしろからのビルドアップを構築することを優先すれば、三笘が下り目のポジションでインサイドから伊藤を追い越させる形だったり、三笘のサイドで引きつけて反対側に振るといった攻撃を勿体ないと考える見方もあるかもしれない。

 チームとして戦術を組み上げながら三笘のスペシャリティーを上乗せするのか、それとも最初から三笘の突破力ありきで良い形で仕掛けさせるためのチーム設計をしていくのか。彼がスタメンで出ることがメインになるほど、向き合っていかなければいけないテーマだ。少なくとも森保監督は誰か1人のタレントに頼らない形を描いているようだが、個人の打開力という基準ではこれまで日本にいなかったレベルのタレントなので、逆にハンドリングは難しくなるかもしれない。

 もちろん右サイドでは伊東が健在で、中村敬斗のような三笘や伊東に続く気鋭のサイドアタッカーもいるので、戦術的な構築に個の力をどう融合していくかというのは北中米W杯で躍進するための大きなテーマになり得る。

■トップ下に求める役割

 うしろから組み立てながら左右のサイドを起点としていくビルドアップで、難しいのはトップ下の関わり方だ。ウルグアイ戦で見せたビルドアップだと、4-2-3-1よりも4-3-3のほうがスムーズに回るかもしれない。トップ下の選手は中央に止まればボールを触りにくくなりワイドに流れれば中央でフィニッシュに絡みにくくなる。そうなると鎌田のようなボールを触ることでリズムを作るタイプはトップ下で生きにくいかもしれない。

 ウルグアイ戦は左右のサイドバックを使ってボールを動かす意識が強く、ウルグアイも特に中央の守備がタイトだった影響もあるが、トップ下の選手が攻撃の起点として振る舞いにくいスタイルであることも確かだ。その場合、西村のような2列目からオフ・ザ・ボールでどんどん飛び出したり、出し手より受け手になる側を得意とする選手がメインになっていく可能性もある。

 鎌田もフランクフルトで見せているように、タイミングよく飛び出してフィニッシュに絡む能力はある。ただ、それをメインにするタイプではなく、本質的には「8番タイプ(主にゲームメイクを司るようなボランチ)」と自覚しているところもある。それならばボランチをメインにしていくほうがハマりやすいかもしれない。久保建英の場合は流れに応じて、どちら側にもなれるタレントなので、4-2-3-1でビルドアップを作り上げていくのであれば、久保や西村がこのポジションでメインに、鎌田はボランチにシフトしていくかもしれない。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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