第2次森保ジャパンに早速3つの疑問 記者会見と過去の発言から紐解く指揮官の“真意”

第2次森保ジャパンの初陣メンバー26人が3月15日に発表【写真:徳原隆元】
第2次森保ジャパンの初陣メンバー26人が3月15日に発表【写真:徳原隆元】

【識者コラム】森保監督が3月シリーズでベテラン勢を招集外にした理由は?

 第2次森保ジャパンの初陣メンバー26人が3月15日に発表された。そこで生じた3つの「疑問」を、森保一監督のメンバー発表記者会見と過去の発言から真意を探る。

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 この会見でポイントになったのは3点あった。

1:ベテラン勢を招集外にした。
2:海外で活躍している選手を招集しなかった。
3:同時期に活動するU-22日本代表のメンバーを招集した。

 実は。どれも非常に森保監督らしい選択だったと言えるだろう。

<1:ベテラン勢を招集外にした>
 今回のメンバー発表で最も驚きを持って受け取られたのは、吉田麻也を筆頭とするベテラン勢を誰も呼ばなかったことだろう。特に、吉田麻也についてはこれまで森保監督との深い信頼関係が見受けられていただけに、全体的な若返りが図られるにしても残るのではないかと考えられていた。

 森保監督は吉田が怪我をしているとき以外、常に代表チームに招集した。2021年は韓国との親善試合のためにチャーター便を用意してまで呼び戻していた。ワールドカップ(W杯)では、ハーフタイムでロッカールームに戻る時に森保監督と2人で歩きながら戦術についての指示を聞く重要な役を担ってもいた。

 また、森保監督も1月28日、ヨーロッパ視察前の空港で「まず吉田に会いたい。W杯後にゆっくり話す時間が取れずにいたので、会って(W杯の)振り返りをまずキャプテンに聞く」と話していたのだ。

 吉田の所属するシャルケが残留争いの真っ只中にいるという点を考慮したとは思えない。なぜならシャルケとほぼ変わらない順位にいるシュツットガルトからは遠藤航も伊藤洋輝も招集されているのだ。

 2018年のロシアW杯後に長谷部誠が日本代表からの引退を表明し、森保監督も選ぶことはなかった。だが吉田は代表引退に言及しておらず、今回のケースとは違う。吉田らベテラン勢について森保監督はこう語った。

「彼らがいなくなった時にどれだけ日本の力として、またつけていけるかということを、これからに向けて培っていかなければいけない」

 それでも、ここまでの事象を考えると、吉田が外れたのはとても意外ということになる。一方で、これまでの森保監督の選手選考を考えると、当然とまでは言わないにしても、非常に「らしい」選択ではあった。

 どんなにいい関係を築いていたとしても、それまでのチームの貢献度を評価していたとしても、チャンスは平等にしか与えない。特に実力が分かりやすいベテランについてはその傾向が高いと言えるだろう。

 ロシアW杯で当時29歳だった香川真司は、3試合に出場して1ゴールを挙げた。だが森保監督は2019年3月まで招集せず、6月にも呼び寄せたものの、その後は2年半、青いユニフォームを着せることがなかった。監督はその後もヨーロッパ視察の際は顔を合わせていると語っていたものの、チームに入れることはなかった。

 逆の例としては谷口彰悟が2021年、4年ぶりに出場したセルビア戦でハイパフォーマンスを見せ、そのままW杯メンバー入りするに至った。ベテランでもチャンスをモノにすれば継続して呼ばれるのだ。

 吉田はこれでもう呼ばれないということはないだろう。だが、巡ってくるチャンスは少ないはずで、そこで好プレーを見せない限り、森保監督はリストに名前を書くことはない。それが“森保流”なのだ。

なぜ結果を出しているセルティック古橋&旗手は呼ばれなかった?

<2:海外で活躍している選手を招集しなかった>
 今回の会見で、セルティックで好調な古橋亨梧や旗手怜央を招集しない理由についての質問が出た。古橋は今季リーグ戦20得点、旗手はリーグ戦出場26試合のうち23試合がフル出場。一方で招集された前田大然はリーグ戦7得点で18試合のフル出場にとどまっている。

 森保監督はUEFAチャンピオンズリーグ(CL)での戦いぶりを現地視察し、その後も映像をチェックしていることを明かしつつ、こう語った。

「(選手の)幅を広げながら、チーム力を上げていくなかで、違う選手を見たい、試したいというところで、複合的にいろんなことを考えて今回招集外になったところもあります」

 こう話しながら、珍しく森保監督の語気はそれまでよりも強くなった。古橋や旗手に関してはこれまで何度も質問されていたということもあるだろうが、監督としては何度も手元で試したという気持ちなのかもしれない。

 古橋は森保ジャパンで16試合に出場し、5試合で先発した。3ゴールを奪ったが、モンゴル戦の2ゴール、タジキスタンの1ゴールで、2021年6月以降得点がない。サイドで使われると良さを発揮できず、トップに入っては周囲との呼吸がなかなか合わなかった。2022年6月10日のガーナ戦で前田が1得点だったのに対し、古橋にゴールがなかったことが大きく影響したと考えられる。

 旗手はレギュレーションの変化が影響を与えているかもしれない。2022年のカタールW杯からは選手を26人登録できることになった。これによって、GK3人を除くと1つのポジションに2人ずつという23人登録の考え方から変化が生じた。これまではさまざまなポジションをこなせる選手が重宝されたが、3人増えたことでスペシャリストを入れやすくなったのだ。

 DFからFWまで幅広いポジションをこなせる旗手だが、ではそれぞれのポジションの選手と比べた時にどうか。森保監督もW杯メンバー発表直前まで迷っていたはずだ。だが2022年9月のアメリカ戦、エクアドル戦と出番を獲得できず、代表チームの中での位置を獲得できなかったと言えるだろう。

 監督とすると、一度下した決断を変えるほどのプレーはまだ見ていない、あるいはこれまで何度も試したので、今回は新しい選手を試したいというところだろう。

両SBは新たな選手に経験を積ませることが急務

<3:同時期に活動するU-22日本代表のメンバーを招集した>
 2018年に日本代表を率いることになった時と、森保監督の置かれている状況は違う。最も大きな違いは、五輪代表監督を兼ねていないというところだ。

 2022年のカタールW杯までは「1チーム2カテゴリー」として、大きなグループの選手を自分で見ることができた。そのため五輪代表として招集しても、自分の目、あるいは日本代表でもともに指導した横内昭展コーチの目で選手を確かめられた。

 だが今回は、大岩剛監督と役割分担しながら選手を見ていくことになる。となると、これまでよりもより日本代表のほうに選手を呼んで試しておきたくなるはずだ。また、「オリンピック世代の代表を目指すではなくて、日本代表を選手たちには目指してほしい」という監督の意向もあるだろう。

 加えて、日本代表が抱える深刻な問題も影響を与えている。2022年のカタールW杯で両サイドバックを務めたのは32歳の酒井宏樹と36歳の長友佑都。怪我でW杯出場が叶わなかった中山雄太は26歳、W杯に出場した山根視来は29歳。この2人が今後も順調にプレーしていたとしても、新たな選手に経験を積ませないと4年後は大きな穴になる。

 となると、現在U-22日本代表で活躍する有望株を招集すれば、経験も積ませられるしU-22日本代表のためにもなる。一石二鳥になる、と考えたのではないだろうか。その整然とした発想は森保監督らしい考え方だと言える。

 以上の3点を推測しつつ、あとはトレーニングで何を植え付けるのか。2018年の初招集の時はボール奪取した後の攻撃の組み立てからフィニッシュまでをひと通り説明した。これまでの蓄積があると考えると、さらに何か新しいことが今回は出てくるだろう。

 どんな新しいテイストを付け加えるのか、それが今回の森保ジャパンの楽しみの1つでもある。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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