第2次森保J初陣へ「招集すべき」旬のタレント 海外&国内から5人を厳選、激戦区左サイドに挑む選手は?

新生日本代表入りに招集するべき選手たちをピックアップ【写真:徳原隆元 & Getty Images】
新生日本代表入りに招集するべき選手たちをピックアップ【写真:徳原隆元 & Getty Images】

【識者コラム】W杯メンバー外の海外、国内組から招集したい5人をピックアップ

 第2次森保ジャパンの初陣となる3月シリーズで注目ポイントの1つとなるのが、招集メンバーの顔ぶれだろう。新戦力がどの程度組み込まれるのかを占うべく、ここではカタール・ワールドカップ(W杯)メンバー入りを果たせなかった海外、国内組の中から「招集すべき」5人をピックアップして紹介する。

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■中村敬斗(FW/LASKリンツ:オーストリア)

 抜群の打開力と決定力でゴールを量産する気鋭のサイドアタッカー。オーストリア1部リーグで11得点4アシストを記録しているが、その大半が“ゴラッソ”と呼べるもので、圧巻のシーンとともに名前を轟かせている。

 J1ガンバ大阪でプロデビューした当時からドリブルの突破力などで輝きは放っていたが、良くも悪くも自由奔放で、パフォーマンスに波があった。オランダ、ベルギーと欧州の壁にぶつかりながら、フィジカル的にもメンタル的にもタフになったことが、現在の数字にも表れていると言える。

 ただし、主戦場とする左サイドは激戦区。プレミアリーグで躍動する三笘薫(ブライトン)を筆頭に“カタールW杯組”で、三菱養和SCの先輩であるMF相馬勇紀(カーザ・ピア)など、タレントが充実しているポジションだ。

 森保一監督も「彼のよさを磨きながら、欧州の強度で戦っていけるという強さと逞しさを身に付けている」と評価。指揮官が3月の活動をどう位置づけるかが今回の招集ポイントかもしれない。

■川辺 駿(MF/グラスホッパー:スイス)

 今季のスイス・スーパーリーグで8得点5アシストをマークしており、強豪FCバーゼルとの大一番で後半アディショナルタイムに決勝ゴールを奪うなど、勝負強さもアピール。欧州5大リーグほどの強度はないかもしれないが、中盤で攻撃を組み立てながら、これだけ決定的な仕事ができている日本人選手はMF鎌田大地(フランクフルト)と川辺ぐらいだろう。

 カタールW杯に向けても候補の1人ではあったが、最終予選以降は声が掛からなかった。“ボックス・トゥ・ボックス”の動きができ、しかもサンフレッチェ広島の先輩であるMF青山敏弘を彷彿とさせる“1本のパス”も備える。3年半後には30歳となるが、森保ジャパンに新たな決め手を加えるために、是非とも組み込んでほしいタレントの1人だ。

パリ世代の細谷はJリーグでも“助っ人”のような風格

■西村拓真(FW/横浜F・マリノス)

 驚異的な運動量を90分落とすことなくやり切りながら、ゴール前でクオリティーも発揮する。横浜FMのリーグ優勝に大きく貢献したマルチアタッカーはカタールW杯を戦ったメンバーにないスペシャリティーを持っており、強豪相手に日本が前向きにエネルギーをかけて押し込む“ジャパン・タイム”を増やすには格好のタレントだ。

 昨年のE-1選手権に招集されて、香港戦で2得点を決めるなどインパクトを残したが、W杯に向け最後のアピールチャンスになるはずだった欧州遠征を前に負傷してしまった。特に森保監督からの言及があるわけではないが、相馬やFW町野修斗とともに選ばれる資格はあったと考えている。横浜FMで2年目の今季、チームのタスクは当たり前にやりながら鋭いフィニッシュワークを見せており、欧州組がフルメンバーで招集されない場合はチャンスだ。

■細谷真大(FW/柏レイソル)

 パリ五輪世代のエース候補ということもあり、普通に考えればU-22代表の欧州遠征に招集されるだろう。ただ、やはり“新生・森保ジャパン”の立ち上げということでA代表として欧州組などと活動をともにすることで得る刺激は大きいはず。177センチと1トップのFWとしては小柄なほうだが、重戦車のようなパワーがあり、単純な高さ勝負にならなければ競り合いでも強さを発揮できる。

 さらに裏抜けはもちろん、ボールを持ち運ぶ推進力はFW前田大然(セルティック)やFW浅野拓磨(ボーフム)とも異質で、Jリーグでも“助っ人”のような風格がある。ハイプレスも得意とする細谷。A代表では町野あたりがライバルになりそうだが、パス&ランなど周りを使うセンスも高く、縦の2トップなどで共存は十分に可能だ。

■大迫敬介(GK/サンフレッチェ広島)

 カタールW杯ではGK権田修一(清水エスパルス)の活躍が話題になったポジションだが、若手の台頭が期待される。もちろん湘南ベルマーレからG大阪に移籍したGK谷晃生も有力だが、Jリーグのパフォーマンスを見て最も安定している日本人GKの1人が大迫だ。

 チームのリズムが良い時だけでなく、厳しい時間帯も落ち着いた立ち居振る舞いで守り抜き、リズムを引き寄せる。カタールW杯組のGKシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)は順当だが、J2に降格した清水でプレーを続ける権田、39歳で最近はリーグ戦のベンチから外れているGK川島永嗣(ストラスブール)を森保監督がどう捉えるか。ポルトガル1部で評価を高めるGK中村航輔(ポルティモネンセ)の復帰も期待されるが、大迫の充実ぶりは買いたい。

新潟で活躍するMF伊藤涼太郎(写真中央)【写真:Getty Images】
新潟で活躍するMF伊藤涼太郎(写真中央)【写真:Getty Images】

攻撃陣のサプライズ候補はJ1でブレイク中のMF伊藤涼太郎

“新生・森保ジャパン”と言っても前体制からの継続であるため、カタールW杯から大きくは変えず、徐々に新しい選手を入れていくと考えて今回は5人にとどめた。もちろん、そのほかにもA代表にふさわしいタレントは多くいる。

 欧州組ではDF菅原由勢(AZ)やDF橋岡大樹(シント=トロイデン)、DF瀬古歩夢(グラスホッパー)、FW古橋亨梧、MF旗手怜央(ともにセルティック)がその筆頭で彼らは元々、ラージファミリーで改めて招集される資格がある。ポルトガル1部サンタ・クララでポジションを掴んだ元鹿島アントラーズのMF三竿健斗も面白い存在だろう。

 一方、ボールを奪ってつなぐタイプのボランチではJリーグにも24歳MF齊藤未月(ヴィッセル神戸)やMF高宇洋(アルビレックス新潟)、MF橘田健人(川崎フロンターレ)、22歳MF佐野海舟(鹿島)といった伸び盛りのタレントがアピール中。彼らもまた、A代表入りを推せる人材だ。

 飛び抜けた存在が見当たらない左サイドバックは、森保監督にとって悩みどころだろう。ウイングバックとして強度の高いパフォーマンスを見せる広島の22歳MF東俊希あたりが抜擢されてもおかしくない。

 攻撃的なポジションでサプライズがあるとすれば、J1開幕からブレイク中のMF伊藤涼太郎(アルビレックス新潟)か。現在の代表にもいない“ファンタジスタ”で、しかも決め手がある。ただし、代表チームのタスクをこなしながらスペシャリティーを発揮するというのは簡単ではなく、クリアすべきハードルになりそうだ。

 無論、それも招集しなければ分からないことで、旬な選手にチャンスを与えるのも代表監督の大事な仕事で、日本代表の競争力を引き上げることにもなるはずだ。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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