ソシエダ久保建英、なぜスペイン紙“0点”評価? 番記者がパフォーマンス分析「タケのように普段から…」【現地発コラム】
バレンシア戦で5戦連続スタメン出場の久保、際立つ活躍がないまま後半29分に交代
レアル・ソシエダMF久保建英はラ・リーガデビューを果たした地に戻るも、思うようなパフォーマンスを発揮できずチームも敗戦した。
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UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内のラ・リーガ3位の座をキープするソシエダは2月25日、アウェーで行われた第23節でバレンシアと対戦した。久保にとってバレンシアの本拠地メスタージャは、マジョルカ時代の2019年9月1日にラ・リーガデビューを果たした思い出深いスタジアムだった。
ソシエダはラ・リーガ直近の4試合でわずか1勝と調子を落とすなか、久保は3試合連続MVPに輝くなど好調を維持。その状況下で迎えたバレンシア戦でラ・リーガ5戦連続となる先発出場を果たし、再び4-3-3の右ウイングでプレーした。
しかし、この日はイマノル・アルグアシル監督が試合前に予想したとおり、非常に厳しいものとなった。バレンシアはラ・リーガ5連敗を喫して降格圏内の19位と低迷を続けるなか、前節からクラブのレジェンドであるルベン・バラハが新監督に就任。2023年の初勝利を強く願うホームサポーターの後押しを受けた新指揮官率いるチーム相手に、ソシエダはキックオフから苦戦を強いられた。
久保も前半、チーム同様に激しいプレスを受ける。積極的にドリブルを仕掛けてクロスを入れる場面が見られたが上手く味方に合わず、後半にアルグアシル監督が中盤ダイヤモンド型の4-4-2に変更したことでトップ下にポジションを移した。
これにより前半よりも自由に動けるようになり、後半8分に立て続けにディエゴ・リコやアレクサンデル・セルロートのシュートチャンスをお膳立てするが得点に結びつかず、これまでの3試合と違い、際立つ活躍がないまま後半29分にピッチをあとにした。
スペインメディアは軒並み低評価、ソシエダのアルグアシル監督は久保を擁護
ソシエダは最後までほとんど決定機を作れないまま、前半40分にイゴール・スベルディアが記録したオウンゴールを挽回できずに0-1で敗れ、ラ・リーガ直近5試合でわずか1勝しか挙げられない状況に陥っている。この結果を受けて、スペインメディアによる久保らを含めた選手評価は、当然のことながら軒並み低いものとなった。
クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「久保最高の時間は、利き足と反対の右サイドで素晴らしい切り込みを見せた序盤だったが、ラストパスでオヤルサバルとの意思疎通が上手くいかなかった。その後は少しずつ調子を上げていくも、後半はスペースがなくトップ下としての存在感が希薄になっていった」と寸評し、2点(最高5点)と低評価。同様にスペイン紙「AS」の評価は最低の0点(最高3点)、同紙「マルカ」は1点(最高3点)と全体的に厳しいものになっていた。
アルグアシル監督はバレンシア戦後の記者会見で、ここ3試合MVPに選ばれていた久保が上手く機能しなかったことを指摘され、次のように擁護している。
「タケが上手くいかなかったのは、ほかの選手たちが良くなかったからだ。このチームでは全員が良い状態でいなければいけない。もし今日のように多くの選手のレベルが落ちてしまうと、個人のレベルも下がることになる。また、前節セルタ戦も今日も何人かの選手が持ち味を発揮できなかったのは間違いないが、相手が素晴らしい仕事をし、我々に自分たちのサッカーをやらせてくれなかったということも伝えなければならない」と話し、久保が見せ場を作れなかったのは個人というより、チーム全体の問題であることを強調した。
実際、対戦相手のパフォーマンスが良かったのもさることながら、多数の怪我人を抱え、主力選手の大半が試合に出続けていることも間違いなく影響しているだろう。
ソシエダの番記者が久保について言及「今日のタケはベストの状態になかった」
またバレンシア戦後、「エル・ディアリオ・バスコ」でソシエダ番記者を務めるイケル・カスターニョ・カベージョ氏に、この日の久保について分析してもらった。
「今日のタケはベストの状態になかったものの、イマノルが言ったようにラ・レアル(※レアル・ソシエダの愛称)は組織として機能するチームなので、全員が上手く機能しなければ、タケのように普段から良いプレーを見せる選手も必然的にパフォーマンスが低下する。彼は今日、どのように違いを作ればいいのか分からないようだった」とチームメイトの出来の悪さが大きく影響し、打開策を見出せなかったと考えていた。
続けてチームが最近低迷している点について、「今まで見せていたような素晴らしいダイナミズムを維持し続けるのは非常に難しい」と過去の成績と比較。今季ここまでのパフォーマンスが出来すぎとの見解を示しつつ、「これまで出来が良くなくても勝ち点3を獲得できる試合がいくつかあったが、最近は運を引き寄せることができていない」と、拮抗した試合でツキに見放されていることを理由の1つに挙げていた。
ソシエダは現在、国王杯敗退によりミッドウィークの試合がなく試合スケジュールも緩くなり、慢性的に抱えている怪我人が減りつつある。しかし3月、4か月ぶりにUEFAヨーロッパリーグ(EL)を再開し、ラウンド16(3月9日に第1戦、同16日に第2戦)でアルグアシル監督が模範と語るジョゼ・モウリーニョ監督率いるローマとの非常に厳しい対戦を迎え、束の間の休息が終わることになる。
シーズン終了までの約3か月、EL初制覇とCL出場権獲得という2つの大きな目標に向けて戦うなか、これまで以上にフィジカル面への負担が増大するが、極力怪我人を出さずに最後まで走り続けられることを願いたい。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。