横浜FM、基本技術と機能的な戦術が生み出す”優れたパスワーク” 未完成でも差を見せつけた昨季王者の貫禄

横浜FMの攻撃のキーマン、水沼宏太とエウベル【写真:徳原隆元】
横浜FMの攻撃のキーマン、水沼宏太とエウベル【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】左右の鍵を握る水沼とエウベルがリズム良く展開

 リーグステージの違いはあるものの開幕を来週に控えた2月11日、昨年のJ1チャンピオンの横浜F・マリノスと天皇杯王者のヴァンフォーレ甲府が「FUJIFILM SUPER CUP(富士フィルム・スーパーカップ)2023」で対戦した。5万923人の観客が見守り、両チームが持ち味を存分に発揮した試合は横浜FMが2-1で勝利。新シーズンに向けて勢いを付ける価値ある勝利を挙げた。

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 試合は横浜FMが多彩な攻めで主導権を握り、甲府が組織的な守備で対抗するという展開で進んだ。横浜FMは後方で素早くボールをつなぎながらリズムを生み出し、サイドに張る右の水沼宏太と左のエウベルの両翼が守備網を突破しチャンスを作っていった。このふたりの突破力が、昨年のJ1の覇者が展開する戦術の有効性を左右するカギとなるのだ。

 攻撃のキーマンらしく水沼、エウベルはともに縦への突破を強く意識し、積極的に相手の守備網に挑んでいった、しかし、4バックを敷きハイプレスで対抗する甲府の守備網を簡単には突破できない。このマークが厳しい状況にふたりはポジションを入れ替え、相手マーカーの守備意識を混乱させるなど、揺さぶりをかける工夫を見せる。なによりゴール裏からカメラのファインダーを通して映る横浜FMの背番号18番と7番は、自らが相手攻略の起点であることを自覚し、自信を持ってプレーしている。

 この2人を起点にパスワークでゴールを目指す横浜FMの優れている点は、選手たちが味方の動きを熟知し、その決められたプレーを確実に遂行することによって、局面を打開していくところにある。チームワークで崩すにしても、ボールを持った選手がパスの出しどころを探しているようでは、それは戦術とは言わない。その点、横浜FMのパスワークは出し手と受け手の意思疎通が高いレベルで交わされていて、意図ある連続プレーが展開される。全選手の戦術的理解度が高いのだ。

 パスの出し手は味方の動きを熟知し、受け手も的確にサポートし次のプレーへとつなげていく。流動的なサッカーの試合にあって、お互いがどう動くかを深く理解しているため、ワンタッチでのパス交換も多く、小気味良いリズムを生み出すことに成功している。手数の多さもゴールへと向かう姿勢の停滞とはならず、リーグ内にあってこのパスワークのリズムの良さが、同じスタイルを基本戦術としているチームとの大きな差であり、横浜FMの優れたところだ。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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