“仕掛けの姿勢”が神戸復活の鍵? 新戦力の泉&井出&パトリッキが躍動、チームの序列を覆せるか

神戸の新戦力MF泉柊椰とFWパトリッキ【写真:徳原隆元】
神戸の新戦力MF泉柊椰とFWパトリッキ【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】4日に松本山雅とのプレシーズンマッチ、トレーニングマッチを実施

 J1リーグ開幕を2週間後に控えた2月4日、ヴィッセル神戸はホームのノエビアスタジアムでJ3松本山雅FCとプレシーズンマッチを行った。神戸は大黒柱の元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタが欠場したもののFW大迫勇也、武藤嘉紀、MF山口蛍らが先発出場。試合は神戸が攻めながらも守る松本の牙城をなかなか崩せず前半にスコアは動かなかったが、後半に入るとエース大迫が2ゴールをゲットし、J1チームとしての貫禄を見せた。

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 ただ神戸は終始、攻勢の展開を見せたが90分間を通してダイナミックさを欠き、決して手放しで喜べる試合内容ではなかった。物足りなさを感じさせた原因は、戦術の遂行がゴールを決めるというサッカーにおける最大の目的を上回ってしまったからだ。

 神戸は後方でボールを回して揺さぶりをかけ、サイドに張る選手にボールを託すと、そこから突破を図りゴール前へラストパスを送る展開を基本戦術としている。そこで先発した選手たちは戦術的なチームとしての動きを強く意識し、理想の形での崩しを目指しプレーしているように見えた。そうしたチーム全体の連係で敵の守備網を崩そうとする姿勢は、現代サッカーにおいて間違えではないが、その思いが強すぎると、どうしても個人の力は発揮されづらくなる。

 カメラのファインダーに映し出された武藤とMF汰木康也はドリブルで仕掛ける場面もあったが、チームとして局面を崩す形を意識していたようで、個人技で相手の守備網を突破するよりもパスを選択する場面が目に付いた。

 もちろん戦術は勝利の途を開く重要なものだが、その課された動きに過度に縛られると迫力を失う危険を内包している。“美しさ”や“完全な崩し”にこだわり過ぎ、複雑で高度な過程を求めてしまうと敵陣を目指す流れは停滞し、結果的にゴールを挙げるという本来の目的が霞んでしまうことになる。この日の松本のように守備重視で臨んでくる、勝負しなければならない敵選手が多い場合になると、なおさら手数をかけるはゴールへの回り道となり、ミスも誘発してそれが勝利したものの神戸のサッカーに物足りなさを感じさせた原因となった。

 場面によっては、戦術のなかにもシンプルに一気に個人の力に賭けることがあっていいのだ。先制点をアシストした武藤に、右サイドで奮闘した汰木は前線で合格点のプレーを見せた。それでも彼らが縦への突破を強く念頭に置き、もっと個人の力で松本守備陣に挑んでいたら、チーム全体にスピードのあるプレーが生まれ、チャンスもより作れたのではないかと感じた。2人は待ち受ける敵守備陣に対して、個人で状況を打破できる力を持っている選手なのだから。

徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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