サガン鳥栖が主力の大量流出阻止→タレント獲得 “NEXT鎌田大地”誕生も秘めた新チームへの期待感

主力の流出を極力抑えながら、効果的な補強でチームを前進させる

 今季から新たに加わるのがJ3の松本山雅FCで昨シーズン11得点を記録した19歳の横山歩夢、横浜F・マリノスから加入した20歳の樺山諒乃介といった個性溢れる選手たちだ。川井監督は昨シーズンのベースに自信を持ちながら、そこに個人で違いを作れるタレントを意図的に狙って、獲得したという。その一方で、高円宮杯JFAU-18プレミアリーグファイナルで全国優勝を成し遂げた鳥栖U-18から、U-20日本代表候補の楢原慶輝など、4人の選手が昇格した。

“鳥栖ユース”と言えば、やはり高校時代にプロ契約を果たし、ブンデスリーガ王者のバイエルン・ミュンヘンに移籍(ドイツ4部のセカンドチームからスタートする予定)した福井太智の名前が浮かぶ。鳥栖の選手たちを見ても、ここから多くの選手が各カテゴリーの日本代表、さらには海外の強豪にステップアップしていく可能性に溢れていると実感する。

 周知の事実とは思うが、鳥栖は大口スポンサーの撤退などから債務超過となり、厳しい緊縮財政に伴い、ここ数年は主力の大幅な入れ替えを強いられてきた。そうした状況から選手を国内のライバルに引き抜かれる事例もあとを絶たなかったが、今年は17人の選手が残り、そのほとんどが主力として引っ張ってきた選手たちだ。昨シーズンの11位から大きな躍進も期待できる。川井監督も、主力の流出を極力抑えながら、効果的な補強でチームを前進させる、本来の姿になってきたと手応えを掴んでいるようだ。

 それと同時に期待されるのは1年半後のパリ五輪、そして3年半後の北中米ワールドカップ(W杯)に向けて、1人でも多くの選手が日の丸を背負うことだ。U-20代表のキャプテンを担う中野伸哉や同世代のエースとして期待される横山はもちろんだが、今年トップチームに昇格した坂井駿也も「全然、狙えると思いますし、上を目指すのであれば、そこに絡んで行かないといけない」と語る。ちなみの彼の最大の持ち味はボール奪取で、指標は日本代表の“デュエル王”遠藤航だという。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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