日本代表は「あの感じだとW杯も危ない」 金田喜稔が抱いた不安「最大の懸案は…」
【専門家の目|金田喜稔】「攻撃と守備、両方のセットプレーが気がかりだ」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランク24位)は11月17日、UAEのドバイでカナダ代表(同43位)と国際親善試合を行い、1-2と敗れた。今月23日にカタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第1戦のドイツ代表戦を控えるなか、「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、日本代表が抱える「最大の懸案」について掘り下げている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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カナダ戦では前半21分にコーナーキック(CK)の流れから同点ゴールを奪われ、後半アディショナルタイムにはDF山根視来(川崎フロンターレ)が自陣ペナルティーエリア内で相手を倒してPKを献上し、これを決められて1-2で逆転負けを喫した。
カナダ戦の結果を受けて森保ジャパンを分析した金田氏は、「最大の懸案はセットプレー。しかも攻撃と守備、両方のセットプレーが気がかりだ」と不安材料を挙げている。
「これまでも言われてきたことだが、攻撃時のセットプレーは大きな課題。ゴールが奪えておらず、現状セットプレーからのゴール期待値は低い。日本の失点シーンではCKからマークが外れ、こぼれ球を押し込まれた。スペースが生まれていたし、あの感じだとW杯も危ないという感覚を抱いたが、W杯に向けて危機感を覚えたのは自分だけではないだろう」
日本代表は当然、相手のセットプレー分析などスカウティングを行っている。逆もしかりだが、そのなかでセットプレーは勝敗を分ける重要なファクターの1つとなる。「守備対応ではマークの仕方を再点検し、競り負けないなどの基本を徹底したうえで、危険な場所での不用意なファウルやCK献上を減らすことも大事」と指摘する金田氏は、次のように続ける。
「世界のトップレベルと対峙するため余裕がないのは理解しているし、ギリギリの局面で足が出てしまうこともあれば、身体を投げ出したり、安全第一でクリアしなければいけない場面もある。ただセットプレーを献上すればするほど失点のリスクが高まるのも事実。ギリギリの攻防になるが、できるだけ相手にセットプレーを与えないかも勝利を手繰り寄せるために重要なポイントだ」
ドイツ代表やスペイン代表にワールドクラスの名キッカーがズラリと揃うなか、1つのセットプレーが致命傷となり得る。さらに国の威信を懸けたW杯の特性もあるという。
「W杯は、各国を代表する選手たちが集まりハイレベルな攻防となるうえ、負けられない戦いのなかで守備は自然と堅くなる。そのなかでどうゴールをこじ開けるか。相手にワールドクラスのキッカーがいるとなれば、なおさら不用意なファウルを与えないようにしないといけない。そこは選手個人の判断に懸かってくる」
日本のピンチにもチャンスにもなるセットプレー。守備で耐え抜き、攻撃でどんな秘策を繰り出すのか注目が集まる。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。