なぜ“27人目の選手”でギャンブル!? 町野修斗が森保ジャパンに追加招集された理由を考察
【識者コラム】町野はスーパーゴールこそないが“決めなければいけない”得点を重ねる
日本サッカー協会(JFA)は11月8日、カタール・ワールドカップ(W杯)の登録メンバーとして、負傷のDF中山雄太(ハダースフィールド・タウン)に代わってFW町野修斗(湘南ベルマーレ)が招集された。今年7月、E-1選手権で日本代表に初招集された選手がW杯のメンバーに入るということは、「サプライズ」と言えるだろう。
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招集前に森保一監督は町野について聞かれ、「前節まではJリーグで日本人の2番目の点を取っています」「背後への抜け出し、前線の起点になるプレーで攻撃を牽引している選手」と答えていた。
その町野は初めて日本代表に合流した時、「かなり責任のある試合になってくるんで、プレッシャーは少なからずあるんですけど、楽しみのほうが全然大きいという感じ」と答え、自分の特長を「収めるところだったり裏に抜けるところだったり、いろいろできるのが武器」と語っていた。
そして、E-1選手権では3得点で大会得点王。だが、勢いに乗って選ばれた9月のアメリカ戦(2-0)では後半出場するものの見せ場を作れず、まだ日本代表に定着するには早すぎたように思われた。
それでも今回、森保監督が選んだからにはなんらかの戦術に合致するものがあったためだと思われる。そのため、今シーズンの町野が挙げた右足8点、左足2点、ヘディング3点の13ゴールシーンを振り返ってみる。すると、“あること”が浮かび上がってくる。
町野にはシュートそのもので驚きのあるようなゴールは少ない。ドリブルゴールも10月8日のJ1リーグ第32節FC東京戦(2-0)の自陣から持ち上がって決めた1点のみ。ただし、こぼれ球、GKが弾いたボール、カウンターからのパス、さらには味方がハイプレスで奪ったボールからのショートカウンターのフィニッシュという、決めなければいけないゴールを積み重ねた。
森保ジャパンが作るチャンスでは、右の伊東純也(スタッド・ランス)あるいは堂安律(フライブルク)からのクロス、左の三笘薫(ブライトン)からの折り返しというシーンが思い浮かぶだろう。中央の選手は組み立てをほかの選手にすべて任せて、最後にそのピンポイントに合わせるという役割でもおかしくない。その点で行う勝負に、町野なら対応できるという考えもあるのだろう。
また、今季J1リーグ得点ランク2位、さらに第32節から第34節まで、途中の未消化だった第27節はノーゴールだったものの、連続ゴールを挙げているという調子の良さも考慮したのだろう。185センチ・77キロという体躯も頼もしい。
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。