J1リーグ「残留争い」、8クラブの前線“火力”チェック 静岡勢で明暗…攻撃力で“頭1つ抜けた”清水に大きなアドバンテージ
【識者コラム】下位8チームを対象に「打開力+決定力+選手層」でアタッカー陣の“火力”を査定
2022年のJ1リーグも残り3分の2を過ぎた。夏の移籍ウインドーがクローズ(※リーグ戦の追加登録期限は9月2日、ルヴァンカップは16日まで。フリートランスファー、育成型期限付き移籍、アカデミー所属の選手などに適用)されたなか、今回は“残留争い組”アタッカー陣の“火力”にフォーカスする。
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“火力”とは一般的に銃火器の威力を意味するが、比喩としてゲームなどにおける戦闘力を指して表現されることが多い。サッカーにおいてはアタッカー陣の得点力に相当するだろう。どれだけ後からボールを運べても、どれだけ中盤からチャンスを作れても、前線に最後の打開力や決定力が足りなければ、なかなか得点は生まれない。
残留争い組の線引きも難しいが、自動降格圏(18位以下)から+6ポイント差に位置する11位の北海道コンサドーレ札幌から下位の8チームを対象に、筆者による五段階評価で「打開力+決定力+選手層=火力」として査定してみた。
※各クラブの順位は、8月12日時点のもの
■11位:北海道コンサドーレ札幌
火力11(打開力:5 決定力:2 選手層:4)
“残留争い組”では最も優位なポジションにいる札幌だが、FWの得点力はかなり深刻な状況にある。チャンスは多く、チーム全体でも246本のシュートを記録して、26得点と決定率に課題があり、MFながらシャドーを本職とするMF青木亮太が4得点しているが、かなり寂しい結果だ。
しかし、ここに来て俊足のFW小柏剛が復帰し、韓国から大型FWのキム・ゴンヒを獲得した。5-1と大勝した湘南ベルマーレ戦では、ここまでほぼ不発だったFW興梠慎三も5か月半ぶりのリーグ戦ゴールを決めるなど、前線が活性化してきている。アタッカーの頭数はいるので、誰が爆発して来るか。20歳のFW中島大嘉などにも期待したい。
■12位:アビスパ福岡
火力8(打開力:2 決定力:3 選手層:3)
暫定12位の福岡は1試合少ないが、得点数は最下位の17。ただし、屈強なカメルーン人FWジョン・マリが帰って来た前線の打開力はなかなかのものがある。問題はゴールネットを揺らせるか。前半戦からエース候補の新外国人FWルキアンがブレーキで、核になれなかった。しかし、14人で挑んだルヴァン杯の準々決勝第2戦でそのルキアンが勝利をもたらすゴール。リーグ戦でも終盤のチャージをかけるか。6得点でチームトップのFW山岸祐也が2桁に乗せられるかにも注目だ。
いずれにせよ福岡には堅守という強みがあるので、ライバルを圧倒する“火力”は必要ない。ただ、ルヴァン杯か天皇杯で悲願のタイトル獲得を果たすために、少ないチャンスからでも前線の決定力をさらに発揮して行きたい。
■13位:京都サンガF.C.
火力9(打開力:2 決定力:4 選手層:3)
13位の京都はハードワークがベースにあるだけに、夏場の過密日程で、ややパワーダウンして来た流れはある。ここまで9得点のFWピーター・ウタカも6月以降は1得点しかできていない。前線の選手でウタカに続くのが、FW大前元紀とFW宮吉拓実の2得点とやや寂しい。しかし、ウクライナの強豪メタリスト・ハルキウからブラジル人FWパウリーニョ・ボイアを獲得しており、打開力に優れるニューフェイスが残り試合でどこまで“火力”をプラスできるか。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。