「光を照らしたい」 京川舞はどうバセドウ病と向き合ったのか、海外挑戦に込めた同じ闘病者への想い
【独占インタビュー】バセドウ病と診断される前の悪循環にもがいた日々は「つらかった」
なでしこジャパン(日本女子代表)でもプレー経験のあるFW京川舞は今夏、女子プロサッカー「WEリーグ」のINAC神戸レオネッサからドイツ女子1部1.FFCトゥルビネ・ポツダムへ完全移籍した。2021年4月、「バセドウ病(甲状腺機能亢進症)」と診断されてから約1年の闘病生活を乗り越え、辿り着いた念願の海外挑戦。「同じ境遇の方に少しでも道を示すことができたら」――。病気と真正面から向き合った経験が、不屈のストライカーをさらに強くさせた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史/全2回の2回目)
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2021年2月、高校女子サッカー界の名門・常盤木学園高を卒業して10年目となる節目のシーズンに向けて、自主トレをスタートした京川を異変が襲った。身体を動かすと気分が悪くなり、思うように走れない。貧血を疑い、鉄分の摂取を気にかけたが、同26日にINAC神戸のチーム全体練習に合流したあとも状態は改善しなかった。
「なんでこんなにできないんだ」
「オフにサボリすぎたかな……」
そんな思いから自らを追い込んでいくも、身体が言うことを聞かず、焦りは増していくばかりだった。京川は「もがいてもがいて悪循環」のこの時期を、最もつらかった出来事の1つに挙げている。
「チームメイトよりも動けなくて、自分を追い込んで練習をしても、筋肉は付かないし、体重も増えないし、強くなれない。もどかしい、つらい時間が続きましたね」
その後、心拍数・走行距離・運動強度などを計測するGPSセンサー数値で異常を検知。WEリーグの健康診断で心電図異常が確認されて要再検査となり、神戸市内の病院で精密検査を行ったところ、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と診断された。
バセドウ病は、甲状腺を過剰に刺激する自己抗体ができ、新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの分泌が多くなる病気だ。主な症状は、甲状腺の腫れや動悸、発汗量の増加、疲労感など。1000人中2~6人いると言われ、男女比は1対5、20~30代の女性に多いとされる。症状が軽度だったこと以上に、身体に異常をきたしている原因が判明し、京川は「ショックよりも少しホッとしたところがあった」と明かす。