乾貴士、清水へ移籍決断の“舞台裏” C大阪で謹慎騒動と練習不参加の真相、オファーに至る3か月半の道のりとは?

本当は繊細に物事を考える性格 アジア杯でも顕著になった出来事

 事の発端は、確かに乾が小菊昭雄監督へ不服な態度を取ったことからだった。だがその後、練習したくても場所はなく、2か月以上チームとしてのトレーニングを積むことができなかった。

 もともと、今季に懸ける思いは人一倍だった。「C大阪を変える――」。仲良し集団ではダメ、チームとしてレベルアップを図るために海外で学んできたエッセンスを注入するつもりだった。乾自身、熱くなるとそのまま態度に出るように思われがちだが、実は繊細に物事を考えてから動くタイプでもある。

 2019年のアジアカップ、追加招集で森保ジャパンへ合流した乾。前年のロシア・ワールドカップ(W杯)での活躍が記憶に新しいなか、立場としては“中堅”的な位置だった。MF堂安律やMF南野拓実らが新しい日本代表の顔として躍動し、DF吉田麻也やDF長友佑都ら経験豊富な選手が先頭に立つ。乾は控えだったが、潤滑油として主力とベンチの間を取る役割を担った。

 初戦のトルクメニスタン戦、残り10分でリードは1点、交代枠が2つ残っている状況で森保監督は動かなかった。森保ジャパン立ち上げ後、初めての公式大会。そのベンチワークに疑問を抱いた選手も多かった。試合後、乾は指揮官のもとへ話に行った。森保監督からは「試合を経験して戦術を浸透させ、選手同士の感覚もすり合わせられる」と答えを得られ、選手たちの疑問は解消された。

 この行動、1歩間違えれば造反と捉えられかねない。だが、この行動に至るまで、乾はサンフレッチェ広島時代から森保監督をよく知るMF青山敏弘やMF塩谷司に「森保監督はこういうことを聞いても大丈夫か」と、“取材”してから直談判に至っていた。

 何度も繰り返すが、今回問題になった不服な態度は感情的なものであってはいけないことだった。だが、その後の行動はよく考え、乾自身が冷静な話し合いを望んでいたのも事実。そして、今は新天地の清水で力を発揮することにベクトルを向けている。サッカーでの間違いはサッカーで取り返す。ボールを追い、ゴールに飢えている34歳のベテランは、清水のJ1残留への起爆剤となってくれることだろう。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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