Jクラブ→プレミアクラブ行き…「まさか半年で」こじ開けた“狭き門”の舞台裏 MF川辺駿が衝撃「でかくて、速くて、強いやつが上手い」
【インタビュー】前半戦の活躍が評価されて舞い込んだ「2週間ぐらい練習参加どう?」
2021年7月に日本のサンフレッチェ広島からスイス1部グラスホッパーへ移籍し、半年後にイングランド1部ウォルバーハンプトンと契約を結んだMF川辺駿のキャリアは、今後の日本人選手にとって新しいモデルケースになるかもしれない。
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グラスホッパーはスイスリーグ優勝回数最多27回を誇る名門クラブ。かつてはスイスだけではなく、欧州においても高い評価を得ていた。ここ最近はめぼしい戦績を収めることができず、2年前の2018-19シーズンには2部降格という憂き目にもあっている。ここ20年間でのタイトルは13年のスイスカップ優勝のみ。川辺自身も獲得のオファーが来た時には、クラブのことをそこまで知らなかったという。(取材・文=中野吉之伴/全4回の4回目)
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「スイスリーグといえば、バーゼルかヤングボーイズくらいしか知らなかったですけど、グラスホッパーって歴代優勝回数が一番多いって情報聞いて、へぇって思って。あとは年配の知り合いの方とかに話を聞いてみたら、『名門だよね、知ってるよ』という反応があったりしたので、『そうなんだ』って興味を持ってという感じですね。ウルブスス(ウォルバーハンプトン)と繋がっているのも知っていました」
グラスホッパーは2021-22シーズンから1部復帰を果たした。しかし、昇格組ということは優勝争いに絡める立ち位置にはなく、まずは残留が目標になる。現実的な戦いの連続になることは想像に難くない。その一方で、ここには夢もある。活躍の先に限りない可能性が秘められており、それが大きなモチベーションとならないはずがない。
「もちろん相当狭き門だと思うけど、グラスホッパーで活躍したらウルブスに行けるというのを少なからず理解していました。こっちにウルブスからレンタルできている選手も何人もいます。そういう選手より活躍すれば、という分かりやすいものがここにはあった。だから、ゆくゆくはとは思ってました。まさか半年でとは思っていなかったですけど」
前半戦での活躍が認められた川辺のもとにウォルバーハンプトンから話が舞い込んできたのが2021年12月。スポーツ・ディレクターから「1月にトレーニングがあるけど、どうする?」という話が舞い込んだ。
「そりゃもうもちろん、みんながしたいことじゃないですか。したくてもできないことですから。元々先に契約が決まっていて、こっちが1月シーズン中断期だったので、『その間、2週間ぐらい練習参加どう?』という話になったので、『行ってみたいです』と答えて、行ってきました。バタバタしましたけど、すごく貴重というか、もしかしたら一生できないほどの経験かもしれないじゃないですか。すごくいい経験だったし、自分の今の立ち位置というか足らないところを感じ取って、明確な目標ができたなと思います」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。