約5000分の2となる異色の転身 30歳で引退→審判へ、セカンドキャリアで目指すサッカー界の普及と強化

御厨は負けたチームも納得できるレフェリングを追求【写真:Getty Images】
御厨は負けたチームも納得できるレフェリングを追求【写真:Getty Images】

自分のレフェリングで満足できた試合は「1つもない」

 そうした考えが根底にあるから、御厨は試合を終えて整列した際、負けたチームの選手が握手をしに来たり、控室に戻る際にスタジアムから拍手を浴びたりすると、「今日のレフェリングを受け入れてもらえたのかな」と、ホッとするという。その一方で、試合になってから自分が満足できた試合は、「本当に1試合もない」と苦笑する。

「もちろん、最後に『今日は受け入れてもらえたな』と感じられることはあるのですが、『今日は完璧だったぜ!』と、胸を張れるような試合は1試合もないですね。映像を見返すと、『なんでこっちに行かなかったんだろう』とか、『ここで選手がメッセージを発してくれているじゃないか』というのが、必ず出てきます。まだまだ突き詰めていかなければいけません」

 現在1級ライセンスを保有している御厨だが、まだ目標であるプロフェッショナルレフェリーへの道を歩んでいるところだ。Jリーガーを退き、審判員としてJリーグの舞台に戻ってきた御厨を見て、すでに現役のサッカー選手たちからもセカンドキャリアとしての審判について教えてほしいという声があったという。引退した日本人Jリーガー5000人の中で、パイオニアとなった御厨のセカンドキャリアは、今後も大きな注目を集めるものになるはずだ。

(文中敬称略)

[プロフィール]
御厨貴文(みくりや・たかふみ)/1984年5月11日生まれ、長崎県出身。海星高―大阪体育大―甲府―草津(群馬)―富山。対人プレーと空中戦に長け、J2通算159試合7得点をマーク。2014年限りで現役引退後、会社員をしながら審判員の資格を取得し、19年には1級審判員へ。これまでJ1通算6試合、J2通算22試合、J3通算17試合、リーグカップ4試合を主審として担当。副審もJ3で通算13試合を務めている。

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