ACミラン再生の象徴「カーサ・ミラン」 名門が世界に誇る革新的オフィスの全貌を探る

 

若き社長バルバラが胸を張る“我が家”の完成、「われわれは世界で唯一の存在」

 

 セリエAが世界最強リーグと呼ばれた時代は遠い過去となった。八百長問題やスタジアムでの暴力事件など、ピッチ内外の黒い闇に覆われたイタリアサッカーと共に、世界屈指の名門であるACミランもまた凋落の一途をたどった。

 昨季は、2度の監督交代というお家騒動の末にリーグ8位に終わり、今季欧州カップ戦への出場権を逃す事態。ディアブロ・ロッソ(赤い悪魔)の浮沈の危機に、ミランの若き女帝は斬新な方策で、かつてのブランド力回復への一石を投じた。

 運命の日は2014年4月2日だった。ミランは、新オフィスをメディアに公開した。

 ミラノ市街アルド・ロッシに建設された、9000平方メートルの斬新かつウルトラモダンな建築物の名前は「カーサ・ミラン」。日本語で“ミランの家”を意味する。ネーミングは実にシンプルだ。

 ACミランのオーナーであり、元イタリア首相のシルビオ・ベルルスコーニの次女バルバラ・ベルルスコーニ社長は、近代的かつポップな意匠の凝らされた会見場でこう説明した。

「私のファミリーは、サッカーへの投資を続けていく。今までは国内外からサポーターがミラノを訪れても、ミランのクラブとサポーターをつなげるような、ミランの勝利や栄光の歴史を紹介できるような場所が存在しなかった。ミランブランドの価値を高める、そういう装置が求められていた」

 女帝はカーサ・ミランを、スタッフがただ業務に従事するオフィスではないと定義する。世界中のティフォージが訪れ、選手との絆を育む“家”であるというのだ。

 カーサに併設された広場は2万5000平方メートルで、ミラノ市街で最も大きい広場だ。クラブの表彰式や集合写真撮影、イベントなどを行い、実際にサポーターと選手の交流の場となる。ブラジル・ワールドカップ開催時には巨大スクリーンが設置され、パブリックビューイングも行った。

「シアモ・ウニコ・アル・モンド」

 バルバラが言い放ったのは、イタリア語で「われわれは世界で唯一の存在」を意味するフレーズだ。80年代後半から90年代にかけて、スクデット6回とビッグイヤー3度を勝ち取った名門の復活を、高らかに宣言したのだった。

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