「厳しい世界」 シャルケ板倉滉、監督解任乗り越え掴んだ主力としての成長 去就にも言及「とにかくプレーする場所でしっかり」

シャルケの日本代表DF板倉滉【写真:Getty Images】
シャルケの日本代表DF板倉滉【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】板倉滉はシャルケの1部昇格に貢献

 ブンデスリーガ2部シャルケの最終戦となったニュルンベルクとのアウェー戦はホームと変わらぬ熱いファンのサポートでうめつくされていた。もともとシャルケとニュルンベルクのサポーターは堅い友情関係で結ばれている。対戦相手にはこれでもかというほどのブーイングと罵声を飛ばすのが日常茶飯事なブンデスリーガにおいて、アウェーチームのクラブソングが試合前に流れ、それにホームチームのサポーターが拍手を送るなんてことは他ではありえない。ニュルンベルクのスタメン発表時には、シャルケのサポーターも一緒になって選手の名前を叫ぶのだ。仲がいいなんてものではないほどの絆がそこにはある。

 なぜそこまでの関係性が築かれたのか。いきさつやそれにまつわるストーリーは数多くある。もっとも有名なものは「アウェー戦に駆けつけたシャルケサポーターが財布をなくして困っていた時に、ニュルンベルクファンがお金を出し合い、帰りの電車賃を工面してくれた」という話だ。

 もちろん試合となると両チーム全力で勝利に向けてプレーをするし、お互いのサポーターはそれぞれのチームの応援に没頭するが、試合後にはまた拍手で健闘を称えあう。そんな関係性と雰囲気の中で決まったシャルケの優勝劇だったので、試合後にはお祭り騒ぎだ。両チームのサポーターがグラウンドになだれ込み、あちこちから祝いの歌が響いてくる。

 メインゲート近くに確保してあったスペースで行われた優勝セレモニーをファンが一緒になって間近で盛り上げる。優勝皿を選手が代わる代わる持ち上げていき、それに呼応してファンの声援が重なっていく。

 笑顔の板倉滉の姿もそこにあった。キャプテンのシモン・テローデから促されて優勝皿を手に持ち、仲間と一緒に喜びを爆発させる姿が印象的だった。場の雰囲気に合わせてとかではない。

「自然に出てますね。うれしいですからね。案外そういうのは行けるタイプなんで(笑)」

 この日もスタメン出場を飾った板倉は今季31試合に出場。夏の移籍市場が閉まる直前でレンタル移籍が決まったことで、チームになじむ時間もそこまでない中すぐにレギュラーとして起用されることになった。ディミトリオス・グラモジス監督が解任されるなど、難しいことも多かったシーズンだったはず。

「前の(グラモジス)監督の時に40ポイント以上稼いでいたし、そこで前の監督が解任された聞いたときに、厳しい世界だなと正直感じましたね。直近1勝1分け1敗という戦績で解任されたわけですから。厳しいな、と。でもみんな1部昇格というところを目指していたし、いいきっかけにしたということでまとまった。そこから毎試合負けられない戦いが続いて、これだけ勝ち点を積めたというのはよかったなと思います」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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