日本のスポーツ現場で暴力・暴言問題はなぜ頻繁に起こるのか ドイツでの厳格な対処や準備とは?

秀岳館高サッカー部の暴行疑惑で現場の課題が浮き彫りに(※写真はイメージです)【写真:Getty Images】
秀岳館高サッカー部の暴行疑惑で現場の課題が浮き彫りに(※写真はイメージです)【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】「暴力・暴言問題」前編――指導者の組み合わせもポイントに

 日本のスポーツ現場では、暴力・暴言問題が頻繁になぜ起こるのだろう?

 監督やコーチが選手を「蹴り飛ばす、はり倒す、ビンタをする」。手を出さないからといって、「罵倒する、侮辱する、軽蔑する、脅迫する」。指導者だからやっていい“当然の権利”なわけがない。コンプライアンスがどうこうという以前に、人として相手と向き合う時に最低限持っていなければならないリスペクトの気持ちも、安心・安全の概念もないというのは、指導者・教員としてあまりに未熟としか言えないではないか。

 そうした事例が日本でしか起こってないとは言わない。ドイツでだって問題が起こることはある。それでもそうした時の対処やそうならないようにするための準備というのは確かに行われていると思われる。今回はそのあたりをまとめてみたい。

【1】無犯罪証明書の提出

 僕ら指導者はクラブに加入する前に、無犯罪証明書の提出が義務付けられている。無犯罪証明書は各自治体の役所ですぐに受理することができる。そこにはこれまでの刑罰が記載されているというわけだ。

 クラブとして、どんな過去を持った人かをある程度知っておくことは重要だ。過去に何かないに越したことはない。とはいえ、ない人でなければならないというわけではない。すでにしばらく時間が経ち、確かな反省・更生をしたと判断したのであれば、受け入れられることもある。ただしその場合はオブサーバーというか、その指導者の取り組みを身近でチェック・サポートができる人がセットで起用される。

【2】厳格な対処

 無犯罪証明書が提出されたからといって、その人は今後何も問題を起こさないということには残念ながらならない。例えば、僕がこれまでに所属している・していたクラブには問題が起こったところもあった。

「1人の指導者が選手に手を出してしまった」こともあったし、「児童ポルノ」問題で警察沙汰になった事案もある。そうした時、クラブとしては内々にもみ消そうとしたり、ごまかそうとするのではなく、適切で厳格な対処法を講じ、選手や保護者、ほかの指導者やスタッフに対して誠実で正直に説明をし、今後に向けた対策を明確に打ち出すことが求められる。

 問題を起こした当該指導者はクラブから即時除籍扱い。場合によってはすぐにサッカー協会から「ライセンスのはく奪、指導者としての活動停止・休止」といった処分も下される。守るべきもの・人が何なのかを見誤ると、クラブへの信頼はすぐにガタ落ちになり、選手も保護者も他クラブへ移籍をしていく。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。

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