バイエルン守護神ノイアー、35歳でもトップたる所以 こだわりの“試合準備”方法とは?
休暇中にコロナ感染も早ければ1月10日にチーム合流へ
GKとして相手の傾向を頭に入れておくことは当然として、詳細まで掘り下げるというのは実際には何をどこまで調べておくのだろうか。それに、情報量が多すぎることが逆にマイナスに働いたりすることはないのだろうか。
「チェックしておくのは各選手の1対1における特徴、コーナーキック(CK)のバリエーション、フリーキック(FK)のトリック、センタリング時の対応、PKについてなどかな。あとは、試合における特徴的なプレーなんかも頭の中にカテゴリー分けされてしっかりと入っている。大事な場面では状況をしっかりと読み取って対応しないといけないから。相手チームで交代選手が入ってきたら、トニと情報交換することもある。普通のチームミーティングは試合前に少しするだけ十分だ。あとはアップ時に自分の目で選手を見て、自分の頭の中にセットする。もちろん万事が予定通りのプレーで来るわけではないから、そこまで準備をしても助けにならないこともあるけどね」
プロフェッショナルな準備で試合のいかなる状況にも最適な判断ができるようにしておく。毎試合それだけの準備をして、試合後に整理をして。そうした経験の積み重ねが今のノイアーを作り上げているのだろう。
2021年ラストゲームだったリーグ第17節ヴォルフスブルク戦に4-0で快勝したあとにノイアーは前半戦を振り返り、22年にこれから訪れるハイライトに向けての意気込みを口にしていた。
「ドイツカップで敗退したり、フランクフルトにリーグで敗れたりとネガティブな試合もあったが、トップチーム相手に好パフォーマンスを披露することができた。CL決勝トーナメントを含め、これからの熱い数か月を楽しみに迎えることができる」
バイエルンは1月7日にリーグ第18節ボルシアMG戦(1-2)で後期開幕戦を迎えたが、あいにくノイアーは休暇中のモルディブで新型コロナウィルスに感染したため、まだミュンヘンに戻れていない。隔離生活後に問題なく陰性証明がでれば、1月10日には戻ってくることができるのでは、と見られている。
ノイアーのほかにもバイエルンではコロナ感染者が続出し、現在9選手が隔離中。ボルシアMG戦ではU-17から2選手引き上げるなど緊急体制で試合に臨む予定だ。現時点でリーグでは2位ドルトムントに勝ち点6差をつけており、数人の主力選手が欠場してもしばらくしのぐことは十分に可能だろう。
ただ、ノイアーが言うようにCL決勝トーナメントへ向けてチームは確かな準備をして臨むことが求められる。リーグである程度はリズムを作っておかなければならないのだ。そのために、キャプテンとして絶大な存在感を誇るノイアーのいち早い復帰はバイエルンにとって非常に重要。目標とするCL優勝を果たすためにはつまずきは許されない。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。