「俺らは谷間の世代」 大久保嘉人、アテネ大会予選で感じた重圧と反骨心【五輪代表の舞台裏】

「みんなで『見返してやろうぜ』と」、食事会場で深めた仲間との絆

 “反骨心”も大久保を突き動かした。一つ上の世代はMF小野伸二やMF遠藤保仁ら1999年のワールドユース(現U-20ワールドカップ)で準優勝した「黄金世代」。アテネ五輪代表は「谷間の世代」と呼ばれていた。その悔しい呼び名が広がる一方で、チームは団結力を強めていった。

「俺らは谷間の世代だった。上の世代と比べられたら上が凄かったから、それは仕方ない。谷間の世代と言われても当たり前。でも、みんなで『見返してやろうぜ』と話したことはあった。より絆、一体感は感じた。みんな同じ方向に向いていたから仲もめちゃくちゃ良かったし、すごくいいチームだった」

 ある日の食事会場。仲間が集まったなかで、それぞれ口に出したことがあった。「見返そう」。全員で確認した気持ちはアテネ世代の“合言葉”となった。本大会ではパラグアイ、イタリア、ガーナと同居するB組。初戦のパラグアイ戦で敗れ、イタリアとは2-3と接戦での敗戦。2連敗のなか迎えたガーナ戦では大久保のゴールで勝利を掴んだ。

「1次リーグで敗退したけど、イタリアはすごいメンバーがいっぱいいたし、どれだけやられるのか不安のほうが強いなかでまあまあ接戦だった。もっとやられるかなと思っていただけに、逆に自信になった。だからこそ、ガーナ戦で決めたゴールは特別な思いもある。ここで活躍したら欧州からオファーが来る、と思っていたし、初めての世界大会で得点が取れたというのは、より自分に自信を与えてもらえたゴールだったかな」

 その後、大久保は2005年にスペイン1部マジョルカへ移籍。日本代表として南アフリカ・ワールドカップ(W杯)、ブラジルW杯に出場した。J1リーグでも3年連続得点王に輝き、今季からはセレッソ大阪に復帰。5ゴールを挙げ、前人未到のJ1通算200得点まであと10ゴールに迫っている。アテネ五輪での経験から這い上がり、世界で、日本で活躍を続ける大久保。若き日に見た“自信”と“反骨心”が、今もゴールに向かう38歳FWを支えている。
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(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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