マンCの「WM」に感じた戦術的先進性 クラブが「デジタル」なら代表は「アナログ」

サイドバックながら中盤のポジショニングもこなすDFジョアン・カンセロ【写真:Getty Images】
サイドバックながら中盤のポジショニングもこなすDFジョアン・カンセロ【写真:Getty Images】

【識者コラム】CLボルシアMG戦の攻撃時の布陣が懐かしの「WMシステム」に見えた

 WMじゃないの、これ。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のラウンド16、マンチェスター・シティ対ボルシアMGを見てそう思った。攻撃時のシティのフォーメーションが、昔懐かしい「WMシステム」に見えたのだ。

 WMシステムとは、今風に記せば3-2-2-3だろうか。DFは3人、その前に2人のハーフバック。名称的にはこの5人が「バック」で守備要員。この計5人を線で結ぶとM字になる。攻撃は最前列に3人のFWがいて、その中間にインサイドフォワードが2人。この5人がW字になる。アーセナルのハーバート・チャップマン監督が、1925年のオフサイドルール変更に適応して考案した。

 WMは1930~60年代まで主流だった息の長いシステムだった。ちなみにシステムを現在のように数字で表すようになったのは1958年ワールドカップで優勝したブラジルの4-2-4からと言われている。

 シティのフォーメーションはいちおう4-3-3なのだが、左サイドバック(SB)のジョアン・カンセロは多くの時間を中盤でプレーしているので、並びは3-2-2-3でWMになっていたのだ。ただ、その機能性は当然のことながら昔のWMと同じではないだろう。

 同じではないと断言できるほど筆者はWMをよく知らない。サッカーを知った時は、すでにWMはほぼなかった。高校選手権で静岡学園が採用していたのを見たのが初めてだったと思う。あとはビム・ヤンセン監督がサンフレッチェ広島で一時的にやっていたが、その時の選手たちの反応は「難しすぎる」だった。システム自体はシンプルなのだが、その時には4-4-2や3-5-2など、様々なシステムがあったから対応していくのが難しかった。マンツーマンで守っていたので、相手に引っ張られて自分のポジションから離れすぎてしまい、やりにくかったのだ。今ならマンマークの北海道コンサドーレ札幌も、特にやりにくそうではないので、WMでも大丈夫かもしれないが。

 シティは形のうえではWMだが中身は違う。WとMは、いわゆる5レーンをきれいに埋める。これがポイントなのだろう。ポジション専業的だったWMと違い、選手の立ち位置はかなり流動的だ。ただし、選手の入れ替わりはあっても5レーンを過不足なく埋めている。相手陣内での攻守においてのバランスがいい。

 バランスがいいのでパスは回るしプレスも効く。いくつかのレーンでプレーできる多様性のある選手たちがいないと機能しないが、シティにはそういう選手が揃っている。システムが選手の能力を上げているところもあるだろうが、その逆も言えるわけだ。そもそも、ボルシアMG戦でセンターフォワードに起用されたのはベルナルド・シウバで、完全な偽9番だった。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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