闘莉王、震災で感じた“日本人魂” 被災地に勇気を与えた奇跡のパス【#あれから私は】

東日本大震災復興支援チャリティーマッチに出場した闘莉王氏【写真:Getty Images】
東日本大震災復興支援チャリティーマッチに出場した闘莉王氏【写真:Getty Images】

闘莉王が振り返る2011年東日本大震災、アウェー仙台戦に向かう新幹線で缶詰めに

 2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生した。当時、名古屋グランパスに所属し、アウェーのベガルタ仙台戦に向かっていた元日本代表DF田中マルクス闘莉王は、新幹線に缶詰め状態になった。あれから10年――。複雑な思いを抱えたまま臨んだ日本代表対JリーグTEAM AS ONEの「東日本大震災復興支援チャリティーマッチ」や、ブラジル出身の闘莉王だからこそ感じたことを明かした。(取材・文=Football ZONE web編集部・小杉 舞)

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「普通の試合前の一日という感じだった。新幹線に乗る前までは、『明日試合なんだな』という思いで名古屋から出発して、少ししたら新幹線が急に止まった。何が起きているか僕らには何も分からず、『ちょっとしたら、また動き出すんじゃないかな』という期待をしていたなかで、なかなか出発しない。そのまま止まったまま、1時間経ち、2時間経ってもなかなか戻らない。情報も入ってくることなく、待たされる一方。3時間経ち、4時間ぐらい経ったところで(初めて)情報が入ってきた」

 3月11日、当時名古屋に所属していた闘莉王はJ1リーグ第2節アウェーの仙台戦に向かう途中だった。午前中は練習し、午後から移動。そのさなか、浜松駅を過ぎたあたりで突如東海道新幹線が停車した。故障なのか、トラブルなのか。状況を理解できないまま、新幹線の車内販売も底をつきかけた頃、ようやく東北での大震災を知った。停止からすでに4時間が経ち、同時に映像も確認。衝撃を受けた。

「新幹線からは出られず、どうなるかというのも正直分からないままずっと待たされたなか、映像も入ってきて、大変なことが起こっているんだな、と。新幹線の中にいて、なかなか何が起きているか分からなかった。地震が起きて、津波が陸に上がってきたということは、すごく驚かされて、不安でしょうがなかった。こんなこと日本で起きているのかというぐらい本当に驚きましたね」

 結局5時間以上缶詰め状態に。試合開催の有無も分からないまま閉じ込められ、「正直すごく複雑な思いだった」という。ようやく出発し、掛川駅で新幹線を降車。掛川駅のホテルで夕食をとり、名古屋のクラブハウスに戻ったのは深夜を過ぎていた。

「本当に大きなことが起きたんだなと時間が経つにつれて想像が大きくなって、僕ら選手の中ではそういう会話をしていましたね。(食事会場で)映像も見られて、何が起こっているのかニュースで知ることができた。その映像にびっくりして自分たちで整理できなかった。(バスの中では)正直なところ、試合どころじゃなかった。僕らも仙台に向かっていたし、もうちょっと早くたどり着いていたらどうなっていたか。そういうことを考えてしまって、試合のことを考える暇もなかった。みんな大丈夫なのか。もっと情報が欲しくなるという状況で、サッカーどころじゃなかった」

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