「サッカーが好きな子どもに何を見せたいか」 白熱の首位決戦後に浦和の司令塔が語った熱き思い

プロとして戦う選手自身が抱く複雑な胸中

 こうした試合展開に対する選手たちの反応も複雑だ。FW李忠成は「浦和がリスペクトされてこそだけど……」と前置きをしつつ、「バルサの”MSN”は、こういう試合ばかりなのに100点取るんだから」と話し、MF宇賀神友弥は「バイエルンやバルサも、年間のほとんどがこうなるんだから」と、あくまでも自分たちに目を向けた。一方で、FW興梠慎三は「こういうのはやっていても面白いのかな。見ている方も面白くないと思うんだけど」と、率直な思いを口にしている。

 指揮官は横浜FM戦後の記者会見で、よりハッキリとした持論を述べた。

「今日のマリノスは甲府のようだった。日本を代表するクラブ同士の戦いで、もっとスペクタクルな、お互いが攻撃し合うことを期待していた方も多いのではないかと思います。ただ、片方のチームだけがサッカーをしようとしても、ゴールは生まれません」

 4万人以上の観客を集めた上位対決で、スコアレスドローに終わったこともさることながら、90分間ずっと録画再生が繰り返されるような試合展開に失望感は強かった。確かに、それでも浦和がゴールを決めれば文句は言えないのかもしれない。甲府も横浜FMも、その時点で勝ち点を得るために最善の戦略を選んだのだろう。それは、結果が求められるプロとして正しい姿勢だとは言える。その一方で、興行の担い手としてのプロという視点から見れば、複雑な思いも胸中に浮かんだ。

 24日に等々力陸上競技場に2万5450人の観衆を集めて行われた川崎戦は、浦和が1-0で勝利したものの、相手にもまた「自らのスタイルを貫いて浦和を打ち負かす」という意志があった。特に、後半が始まってから同9分にMF武藤雄樹のゴールが決まるまでの時間は、スピーディーな展開の中でどちらに先にゴールが生まれても不思議ではなかった。そうしたぶつかり合いこそが、試合を見ているファン・サポーターに訴えかけるものになる。

 

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