「異常事態」のヘンクで“不動”の存在 伊東純也、ベルギーで芽生えるプレーの変化とは?
【ベルギー発コラム】開幕3カ月で二度の監督交代、激動のヘンクで伊東が勝ち取った絶対的な信頼
日本代表MF伊東純也の所属するヘンクは現地時間7日、ジョン・ファン・デン・ブロム新監督の就任を発表した。20年近い指導者としてのキャリアがあり、2012-13シーズンにはアンデルレヒトをベルギーリーグの年間王者に導いていることから、経験も実績も十分な人物と言える。ただし、今問題とすべきはファン・デン・ブロム招聘の善し悪しではなく、ヘンクの監督人事そのものだろう。
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シーズン開幕時に指揮を執っていたハンネス・ヴォルフは、2-5で大敗した第5節ベールスホット戦後に成績不振によって解任され、ヴォルフの後任としてやって来たイエス・トルップは監督就任から約1カ月後の今月2日、母国デンマークの強豪FCコペンハーゲンの監督になるために辞任を申し出て、クラブを去った。そしてトルップの後に指揮を執った暫定監督のドメニコ・オリヴィエリを経てファン・デン・ブロムがやって来たわけで、シーズン開幕からまだ3カ月ほどしか経っていないにもかかわらず、毎月のように監督が交代している。まさに異常事態と言っていい。
しかし、指揮官が目まぐるしく変わっても、ヘンクでの伊東の立場は一貫している。腰の筋肉の負傷によって直前までチーム練習に合流できず、出場が危ぶまれていたワレヘムとのリーグ開幕戦(2-1)では何事もなかったかのように先発で起用されてフル出場。さらに新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出たことで課されていた自主隔離が終わった直後の第11節オイペン戦(4-0)では、後半30分からピッチに送り込まれた。試合に出られる状態であれば、多少の調整不足でも使いたいと思わせる「替えのきかない選手」。どの指揮官からも伊東は、そうした絶対的な信頼を勝ち取ってきた。
攻撃のキーマンとしてチーム内で不動の地位を占めるにつれて、伊東自身のプレーにも変化が生まれている。
例えば7日の第12節シント=トロイデン戦(2-1)の後半10分、伊東が前線から中盤まで下りてきて右ハーフスペースで味方GKからのパスを引き出し、ボールを受けた後は素早くターンして右サイドを駆け上がったMFクリスティアン・トルストベットにスルーパスを供給した場面があったが、相手チームの選手の間にできた狭いスペースでボールを受けることを、今の伊東は苦にしていない。
また、試合の流れのなかでチームメートのMFテオ・ボンゴンダとポジションをチェンジし、左サイドでプレーする場面も最近はよく目にする。基本的な立ち位置こそ右サイドだが、そこから流れのなかでピッチ中央や逆サイドにもポジションを取り、時には中盤まで下りていく。そのようにしてチームの攻撃に広範囲にわたって関わっていく役割を、今季の伊東はヘンクで担っている。