「やっと点を取れた」 昨季“JリーグMVP&得点王”の安堵、FW仲川が追求する“結果”

横浜F・マリノスFW仲川輝人【写真:高橋学】
横浜F・マリノスFW仲川輝人【写真:高橋学】

【J番記者コラム】横浜FMのエース仲川、札幌戦で待望の今季リーグ戦初ゴール 

 3-0でリードして迎えた終盤の後半40分、カウンターの場面で背番号23が右サイドを疾走する。エリキからの丁寧なパスを受け、トラップで小さく弾んでいたボールをハーフボレー気味にミート。鋭く振り抜いた右足から放たれたシュートは、ゴール左隅へ吸い込まれた。

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 ようやく生まれた今季初ゴール後に、仲川輝人はどこか照れ臭そうに見えた。ゴール裏で待つサポーターの下へ駆け寄り、両手の人差し指を点に向かって突き立てるお決まりのポーズ。そして左胸に輝くエンブレムをポンポンと叩く。喜びを爆発させるよりも、しっかり噛みしめた。

「やっと点を取れたのでひと安心と、チームの勝利に貢献できたことが良かった」と安堵の表情を見せ、ニコリと笑った。

 昨季のJリーグMVP&得点王が、リーグ戦初ゴールを挙げるまでに13試合もかかった。その間、負傷離脱というアクシデントにも見舞われた。所属クラブだけでなくJリーグの顔となって迎えた今季、ここまで決して平坦な道のりではなかった。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響による日程変更や大会方式の変更があれば、すぐさまコメントを求められる立場となった。選手を代表して言葉を発し、紙面やインターネットに見出しが飾られる。こうしてメディア露出が格段に増え、駅や道を歩いているだけで自然と視線を向けられる存在に変わった。

 元来、目立ちたがりの性格である。期待されるのも嫌いではない。チームメートのマルコス・ジュニオールが得点を決めれば、隣に立って“かめはめ波”のゴールパフォーマンスを披露する。仲間の誕生日には、ペットボトルに入った水を頭の上から流し、アイスボックスに溜まった水もすべてかける。

 そうやって雰囲気を盛り上げ、得点がなくても労を惜しまない守備でチームに貢献してきた。ただ、そんな自分自身に物足りなさを感じていなかったはずがない。昨季は横浜F・マリノスが15年ぶりに優勝し、自身はMVP&得点王に輝いた。自然と欲が増して迎えた新シーズンだ。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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