人気女子サッカー漫画『さよなら私のクラマー』 作品名に込められた「敬意と愛」

女子サッカーの現状について話す深津監督(左)と恩田希(右)(第17話より)【画像:©新川直司/講談社】
女子サッカーの現状について話す深津監督(左)と恩田希(右)(第17話より)【画像:©新川直司/講談社】

タイトルが『さよなら私のクラマー』になった理由

――作中では「女子サッカーに未来はあるのか?」という強烈なメッセージも登場します。女子サッカーの現状について触れている場面も出てきますね。

「僕自身、SNSなどはほとんど見ないので読んでくれた人の反応までは分かりませんが、女子サッカーに関する現状については『みんなも感じているところとだろう』という思いは持っています。女子もプロリーグ(WEリーグ)が始まりますが、これからどうなるんだろうと。

 ただ、僕としては悲観的になっているのではなく、女子サッカーを取り巻く環境が少しでも良くなってほしいなという思いを常に持ちながら描いています」

――第17話(コミックス第5巻)で、恩田が「女子は楽しんでサッカーやっちゃいけないの?」と監督に悩みを打ち明けるシーンが強く印象に残っています。

「いろいろな人の意見があるとは思いますが、やっぱりまずは競技人口を増やすことが一つの糸口になるのかなと思っています。選手の皆さんも頑張っていらっしゃいますよね。最近では長谷川唯選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が『#なわとびリフティングチャレンジ(※)』をやっているのを見ました。本当に素晴らしいと思います」

※長谷川唯選手がツイッターに投稿したハッシュタグ。

――そして、読者の中でも気になるところだと思うのは作品のタイトル。『四月は君の嘘』も物語の最後までタイトルの意味が気になる作品でしたが、『さよなら私のクラマー』もまた意味深なタイトルですね。

「これは……そこまで深い意図はないんですけどねえ(笑)。サッカー好きの方ならピンときてくれるだろうと思っていましたが、クラマーはあのデットマール・クラマーさんのことで間違いないです。もしかしたら若い人はピンとこないんですかね。『日本サッカーの父』と称された方です」

――やはりそうでしたか。タイトルに込められた真意は、今後の展開で明らかになっていくことを期待しています。

「ありがとうございます。ただ、実は最初のタイトルは『さよならクラマー』だったんです。タイトルを決める時になってクラマーさんが亡くなられて(2015年9月17日)……。そのことがあって、僕なりの敬意や愛を込めて「I(私の)」を加えたんです」

(後編へ続く)

『さよなら私のクラマー』
月刊少年マガジン(講談社)で好評連載中。コミックスは第12巻まで発売中(2020年7月現在)。

新川直司(あらかわ・なおし)
2008年『冷たい校舎の時は止まる』(原作/辻村深月/全4巻)でデビュー。著作に『さよならフットボール』全2巻、『四月は君の嘘』全11巻がある。2016年から『さよなら私のクラマー』を連載中。

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