“スペイン2強”の現在地 “バルサ化”するレアル、低調な宿敵と対照的な守備の統一感
【識者コラム】混沌とするリーガ優勝争い、再開後好調なレアルと精彩を欠くバルサ
プレミアリーグはリバプールの30年ぶりの優勝、ブンデスリーガは悠々とバイエルン・ミュンヘンが8連覇を達成、セリエAはほぼユベントスで決まりそうだ。リーグ・アンはすでに打ち切られていてパリ・サンジェルマンが優勝している。欧州5大リーグの中では唯一、リーガ・エスパニョーラの行方がはっきりしない。
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再開後、好調のレアル・マドリードがバルセロナを抜いてトップに出た。プレー内容から言ってもレアルの首位は妥当な気がする。選手層も厚く、ローテーションしながら勝ち進んできたのも今後に効いてくるのではないかと思う。
メンバーを入れ替えながらなので、試合によって出来不出来はあるものの、レアルのプレーにはチームとして前進していく意思が感じられる。その一つが、前線からのプレッシングだ。
高い位置から5レーンを埋めて圧力をかけている。もともとはジョゼップ・グアルディオラ監督時代のバルセロナが得意としていた守備方法だが、再開後のレアルで最も目立つのはこのハイプレスへの意思だ。多少、チグハグなところも見られるが、ハイプレスを外された時のセルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァランのカバーリング能力の高さもあって、今のところ機能している。選手が代わっても守備戦術は一貫していて、レアルにしては割と珍しい統一感だ。中断期間を上手く利用できたのかもしれない。
一方、バルセロナはキケ・セティエン監督の求心力低下も噂され、プレーぶりにもいま一つ精彩を欠いている。2-2で引き分けた第33節アトレティコ・マドリード戦は、20歳のリキ・プッチを先発起用した。プッチをトップ下に置いた4-3-1-2はバルサに限らず、近頃は見なくなったシステムだ。
バルサBから昇格してきたプッチは、かつてのシャビを思わせる技巧的なMFだが、シャビよりもさらに華奢な印象。バルサのカンテラ出身らしいとも言える。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。