大迫勇也に吹く“追い風” 「All or Nothing」の入れ替え戦、ブレーメンを再び救うか
【ドイツ発コラム】ブンデス最終節の大勝劇で自動降格を回避、2部ハイデンハイムとの入れ替え戦へ
土壇場で日本代表FW大迫勇也が所属するブレーメンは、ブンデスリーガ残留へのチャンスを手繰り寄せた。
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第33節終了時でブレーメンは16位デュッセルドルフと勝ち点2差の17位にいたため、最終節のケルン戦に勝利するだけでは逆転できない。デュッセルドルフがウニオン・ベルリンに負けてブレーメンが勝つか、デュッセルドルフが引き分けた場合は、ブレーメンが4点差以上で勝利することが条件だった。
数字上は可能性がある。ただ残留をすでに確定させていて、後半戦好調とは言えないケルン相手に勝つことはあっても、シーズンを通して得点量産ができないでいたブレーメン攻撃陣が、果たしてゴールラッシュを見せることはできるのか。加えてデュッセルドルフはケルン同様に残留を決めているウニオン相手なら、最低でも引き分けには持ち込むことができるはず。あらゆる要素とタイミングが、ブレーメンサイドに微笑まない限り厳しいという見方が多勢を占めていたのは、とても理解できるところだった。
だが、サッカーの世界では「たら」「れば」「きっと」「はず」という言葉が、なんの意味も持たなくなる瞬間がある。事実としてブレーメンはケルンを6-1で一蹴し、デュッセルドルフはウニオンに0-3で叩き伏せられた。今季のベストゲームを最終節で見せ、さらに入れ替え戦出場権も手にした。
追い風が吹いている。
ブレーメン関係者は間違いなく、最高の手応えをつかんだことだろう。さらに2部リーグ3位の座を射止めたのが、北ドイツで覇権を争い続けているハンブルガーSVではなく、無名のハイデンハイムなのだ。最終節では首位ビーレフェルトに0-3で敗れている。世間に知られた有名選手は1人もいない人口5万人の小規模クラブが入れ替え戦の相手と分かった時、間違いなく小さくはない期待が胸に宿ったはずだ。
ブレーメンはケルンに勝利したことで大きな自信を手にした。だが、あの試合のケルンは1失点以降、すでに気持ちがどこかにいってしまっていたことを忘れてはいけない。守備組織はバラバラとなり、出足も鈍り、競り合いの厳しさも垣間見られない。
そうした状況を自分たちで作り出し、チャンスをものにし続けたのだから、ブレーメン選手のパフォーマンスレベルは非常に高かったのは確か。それでも、入れ替え戦は別物だ。90分×2試合の結果だけがすべてを決める。“All or Nothing”――たった一つのミスがすべてを破滅させ、一つのラッキーパンチで展開すべてをひっくり返しかねない緊張感がそこにはある。まさに神経戦だ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。