大久保嘉人、ジダンにも通ずる「立ち姿」の雰囲気 二度のW杯で“日本化”を実現

南アフリカに続いて、ブラジルW杯にも出場したFW大久保嘉人【写真:Getty Images】
南アフリカに続いて、ブラジルW杯にも出場したFW大久保嘉人【写真:Getty Images】

14年W杯コロンビア戦、惨敗も…大久保のプレーは圧巻だった

 岡田武史監督が大会直前まで描いていた「日本化」は、ボールポゼッションとハイプレスを基調としたスタイルだった。日本のパスワークと運動量、アジリティーを生かし、パワーと高さの不足を隠す戦い方である。ただ、致命的だったのは中澤佑二、田中マルクス闘莉王のセンターバックコンビにスピードがなく、ハイプレスを外された時のカウンターに弱いことだった。遠藤保仁、中村俊輔を軸にしたポゼッションにも陰りが見え始め、大会直前に守備型の4-5-1に変更した。

 だが、いざやってみたら、当初のプランとは違う形で「日本化」が成立している。

 パワーと高さが弱点のはずだったのに、中澤、闘莉王、阿部勇樹の3人はハイクロスをはね返し続けた。パスワークは良くても個が弱いと思われていたのに、両翼の松井大輔と大久保はボールを持てばドリブルで突き進んだ。援護がないのでファウルされて止まることが多かったが、松井と大久保は自信に溢れ、技術と運動量で対面の相手を圧倒。この2人に関しては、むしろフィジカルで優勢だった。パスワークこそあまり発揮できなかったが、堅守速攻ベースの日本らしい戦い方はできていた。

 14年ブラジルW杯では、最終選考でいきなり選出された。13年に川崎フロンターレへ移籍し、大久保はゴール前に専念して得点を量産していた。アルベルト・ザッケローニ監督は大久保の能力を評価していたが、すでに本田圭佑と香川真司の二枚看板のいる攻撃陣に大久保を組み込むのは、船頭が多すぎると判断していたのかもしれない。

 結果論だが、大久保の招集は遅すぎた。グループリーグ3試合に出場しているが、最後のコロンビア戦でトップに起用された大久保のプレーは圧巻だ。自由奔放に動く大久保に引っ張られる格好で、本田、香川、岡崎慎司のポジションも流動化し、それはカオスそのものだったが、それだけに妙な迫力も生まれていた。カオスなのでカウンターを食らって次々に失点、1-4で大敗したので印象は悪い。だが、日本のそれまでのW杯で攻撃力は最高だったと思う。

 それはザッケローニ監督が4年かけて作り上げた史上最も完成度の高い攻撃サッカーともかけ離れていて、大久保を軸としたまったく新しい攻撃だった。攻撃的な「日本化」に成功していたザッケローニ監督のチームは、本番直前に本田、香川が調子を落とす非常事態となったが、最後の最後に大久保を中心に新たな可能性を示していた。これがザック体制で最後の試合になってしまったが……。

 2010年と2014年、表れていた「日本化」は両極端だったが、どちらもキーマンは大久保だった。

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(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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