欧州を襲う新型コロナと“疑心暗鬼” ドイツ在住日本人が綴る「アジア人差別論」の実態
【ドイツ発コラム】ライプツィヒで日本人観客の追放が発生…「アジア人だから危険」の理論は通用しない
新型コロナウイルスによる影響は、世界中の様々なところに広がっている。
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ドイツにおいても、先日ブンデスリーガのRBライプツィヒ対レバークーゼンを観戦に訪れていた日本人グループが、試合開始15分の段階でスタジアムスタッフから退去を求められたという事件が勃発していた。このニュースを巡って、SNSでは「人種差別だ」「ドイツ人は信用ならない」「私もこんなことをされた」といった意見が多く見られていたが、実際のところはどうなのだろうか。
個人的なところでいうと、所属クラブや仕事先で僕が誰かに嫌な顔をされたり、何かを言われたりというのはまだ一度もない。フライブルクだけではなく、取材でいろいろな町に行っているが、これまでのところ、変な絡まれ方をされたことはない。
ただ、そうした個としてのつながりの中で、きちんと理解してもらえている一方で、不特定多数の1人となった時でも同じように受け取ってもらえるかというと、なんとも言えない。ドイツにいる人みんながみんな怯えているわけではないけど、得体のしれない何かを避けようとするのは誰にでもある。
感染者が増えてきている地域では、ドイツでも部分休校になったりしているところがある一方で、僕が住むバーデンビュルテンブルク州では学校の完全閉鎖や部分閉鎖という動きはまだ少ない。現時点での判断基準として、コロナ感染規模が広がっている中国、韓国、イタリア、イランからドイツに戻ってきた人は無条件で14日間自宅待機をするように、そして14日以内にそうした地域から来た人と接触があった場合は、当該機関に連絡をしたうえで判断を受けるように、というお達しが保健局からは来ている。
ドイツのロベルト・コッホ研究所はイタリアの一部を危険地域と認定しているし、イタリア人やイタリアから戻ってきた人がコロナウイルスを持っている可能性も高い以上、もはや「アジア人だから危険」という理論は通用しない。ただ欧州人という括りの中で、誰がイタリア系なのかは見た目で区別できない怖さがある。そうなると、せめて見た目で区別できるところから我が身を守りたいというのは、本能的なものかもしれない。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。