名選手の美技を生む“点”の感覚 「足を手に近づける」ための研ぎ澄まされた技術論

圧倒的なテクニックでサッカー界を席巻したマラドーナ【写真:Getty Images】
圧倒的なテクニックでサッカー界を席巻したマラドーナ【写真:Getty Images】

【識者コラム】風間八宏氏に裸足でボールを蹴ってもらい分析、“面”ではない“点”の感覚

 風間八宏さん(前名古屋グランパス監督)に裸足でボールを蹴ってもらうという、少々無茶な取材を行った。

 実は、こちらから素足でとお願いしたのではなく、本人が「裸足でやったらどうだろう」と言い出したので、渡りに船で便乗した。

 なぜ、裸足かというとボールを「止める、蹴る、運ぶ」という動作において、足のどの部分を使っているのかを明確にできるからだ。取材は風間さんにいろいろな技術を実演してもらいつつ、その時にボールと接触した足の部分にシールを貼って確認するという作業を繰り返した。

 ボールを止める時はインサイドの親指の下、少し出っ張っている部分をボールの上部に当てる。指導書などでも「インサイド」とアバウトには書いてあるが、インサイドといってもツマ先からカカトまであるのに、インサイドの「どこ」とまでは書いていない。ところが、実際には止める時にボールに触れるのはインサイドではなく、インサイドのどこかである。

 インステップキックは「足の甲」に当てると思われているが、足の甲にも内側、外側がある。風間さんの場合は甲ではなくて人差し指の根元を当てていた。

 これはどの部分を使えば正解というものではない。ボールを止めるなら、ボールの上部の一点を触れていればいいし、真っ直ぐ蹴るならボールの中心を叩けばいいだけだ。ボールのどこを触るかに正解はあるが、足のどの部分を使うかには個人差がある。ただ、インサイドとかインステップでは範囲が広すぎるのだ。いちおうインステップに当たっているけど真っ直ぐ飛ばない、常に同じように蹴れないということになってしまう。

 テクニックは感覚で覚えるものかもしれない。しかし、感覚を研ぎ澄ませば大雑把に「インサイド」ではすまないはずなのだ。本人が意識しているかどうかは別にして。

 ドラガン・ストイコビッチやエル=ハッジ・ディウフのキックを撮影した大学の先生に取材したことがある。インサイド、インステップ、インフロントといろいろ蹴ってもらって撮影したのだが、後で見るとフォームはほとんど同じだったそうだ。ボールに接触している部分が少し違うだけ。連続写真ではほとんど見分けがつかない。蹴り分けているのはフォームではなく、足のどの点で、ボールのどの点を触るかの違いだったわけだ。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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