JリーグのVAR導入は“劇薬”か? 求められる「ツール」としてのVARへの理解

富士ゼロックス・スーパーカップでもVARが使用された【写真:石倉愛子】
富士ゼロックス・スーパーカップでもVARが使用された【写真:石倉愛子】

PRの佐藤氏はVARを「劇薬」と指摘 「副作用がものすごく強い」

 先日行われた富士ゼロックス・スーパーカップでは、主審が片手でイヤホンを抑えつつ、もう片腕で「待て」の仕草をしている場面があった。この動きは「VARで交信中」の合図だ。試合では①に該当する「得点か得点でないか」の事象で数回VARとの交信があり、結果的に判定は変わらなかったが、数分の確認で間違いを防ぐことができている。

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 また、VARは基本的に90分間動き続けており、フィールドの4人の審判団の会話も絶えずビデオ・オペレーション・ルーム(VOR)に聞こえている。VOR側は必要な時にだけフィールドの審判団と会話ができる仕様だ。レビュー以外でもVARが稼働していることが分かるシーンだった。

 試合中、審判団が「何をしているか」が分かってくるとVARも理解しやすくなる。国際審判も務める佐藤隆治氏は、Jリーグ開幕前の『JFA Media Conference on Refereeing 2020』の最後にVARの印象を語った。

「僕は、VARは“劇薬”だと思っていて。治せなかった病気(誤審)を治せる半面、副作用がものすごく強い。我々(審判団)はビデオがないときと同じように全力を尽くす。そのうえでビデオを使っていく。VARは、サッカーを良くしていくための一つのツールに過ぎない。サポーターの方々にも、徐々に『VARはこうなんだ』と理解してもらえればと思います」

 佐藤氏が言うように、VARは全員が理解するまでに時間がかかる。「誤審をなくすこと」ではなく「はっきりとした、明白な間違いを正すこと」がVARの目的だ。その点を選手、メディア、サポーターが理解したうえで、VARを導入して変化するレフェリングを見守る必要がある。根底にあるのは、「サッカーがより面白くなること」という共通の願い。VARがJリーグにもたらす変化に注目していきたい。

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