「青森山田を倒すために…」 劇的弾の昌平、初の選手権“8強”で因縁の王者と激突へ

昌平高校が國學院久我山高校に勝利(写真は入場行進時のものです)【写真:Football ZONE web】
昌平高校が國學院久我山高校に勝利(写真は入場行進時のものです)【写真:Football ZONE web】

後半ATの決勝ゴールで國學院久我山に1-0勝利、1年生の篠田が殊勲の一撃

 第98回全国高校サッカー選手権は3日、首都圏4会場で3回戦8試合が行われ、ベスト8が決まった。浦和駒場スタジアムで行われた一戦では、優勝候補の一角である昌平(埼玉)が後半アディショナルタイムの劇的なゴールで國學院久我山(東京B)に1-0と競り勝ち、初の準々決勝進出を果たした。

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 後半ATは2分。ラストワンプレーでタイムアップ、PK戦突入が確実視されたその時だった。昌平が逆襲、左サイドにスペースがあった。MF鎌田大夢が左サイドバックのDF大竹琉生に絶好の斜めのパスを配球した。大竹は力強いドリブルで運んでからマーカーを1人かわして横パス。預かった途中出場の1年生MF篠田大輝がワントラップした後、左足を思い切り振り抜くと、球威のある弾道がクロスバーを叩いてゴールイン。ストップウォッチの時間は、ちょうど42分を刻んでいた。

 難敵の興國(大阪)をいとも簡単に倒した前日の2回戦とは打って変わり、打てども打てども1点が遠く、ジリジリする展開がとうとう試合終了間際まで続いた。

 前半は6分、16分、33分。後半は2分、4分、8分、16分、17分、31分と実に9度の決定機があったが、相手GK村上健が好守を連発して立ちふさがった。ポストに嫌われる一撃もあり、シュート数は計17本。國學院久我山には3本しか打たせなかった。

 ゲームキャプテンのMF須藤直輝は、「あのままズルズルいくとカウンター一発でやられる恐れもあったから(篠田)大輝には感謝している」と、値千金どころか“値万金”の決勝点となった。

 藤島崇之監督は1点が欲しくたまらなかった後半23分、まず1人目の交代として篠田を送り出した。2回戦で1得点するも試合終盤に負傷してベンチに控える鎌田、攻撃センスの高いチーム主将のMF大和海里を起用する策もあったが、指揮官は経験の浅い1年生を使った。

「理由ですか? 篠田の決定力に賭けました。練習でもしっかり振り切って蹴っているし、戦術理解度も高い」と絶対の自信を持って投入したことを説明した。采配はズバリ的中。藤島監督は得点が決まった瞬間、満面の笑みで何度も派手なガッツポーズを作った。

 Jリーグの浦和レッズジュニアユース出身の篠田は、ユースへの昇格を目指していたが果たせなかった。「上がりたかったけど、小さい頃から見てきた高校サッカーもやりたかった」と、昇格できなかった悔しさを昌平での3年間で完全燃焼する覚悟を決めたそうだ。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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