“全国仕様”の新戦術とPK戦対策 香芝の周到な準備が選手権初勝利を導く

PK戦に突入し「100パーセント勝てる」

「PKだけは100パーセント勝てると思っていました」

 米原監督には大きな自信があったという。その理由は、前述の5試合の練習試合では、試合後に必ずPK戦も実施。その全てのゲームで勝利を収めてきたという。全国への切符を勝ち取った後に実施した3日間の合宿でも、1日はPK戦のためだけに使ったそうだ。この高校選手権は延長戦がなくPK戦に入るルールだ。それも含めての周到な準備が、選手たちに自信を与えていた。

 果たしてそのPK戦では、GK藤井佑輝也が見事に2本のキックをストップ。香芝は1人が失敗したものの、4-3で勝利した。殊勲の2年生GKは、喜びに声を弾ませた。

「今日は試合中から当たっていたし、自分を信じました。仲間が外してしまったので、自分が絶対に止めると思いました。PKになったので、僕がヒーローになってやると思って入りました。強豪校に勝てて、めちゃくちゃ嬉しいです」

 香芝にとっては、念願の選手権初勝利。2回戦は来年の1月2日のため、念願の“年越し”も果たすことができた。米原監督は「最終的には、どんな形でも勝ちたいという思いでした。よく短期間でこの決断を理解して戦ってくれました。これ以上の喜びはありません」と、選手たちに感謝の言葉を残した。

 そして藤井は「終わった後のロッカールームで、みんなで年越しそばを食べようって言ってたんです」と、笑顔を輝かせた。勝利の余韻に浸りながらチームメイト全員で食べる年越しそばは、最高の味になるに違いない。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

 

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