“手遅れ”になる日本代表 動かないベンチ、戦術に忠実な選手…悪癖はなぜ治らないのか

アジアカップ決勝カタール戦で敗れた日本代表【写真:田口有史】
アジアカップ決勝カタール戦で敗れた日本代表【写真:田口有史】

試合中の修正ができないのは日本代表の“悪癖” アジア杯決勝でもそうだった

 アジアカップ決勝のカタール戦がそうだった。カタールのビルドアップにおける形状変化を抑えるにはマッチアップを噛み合わせる必要があったが、そうすると日本の4-4-2は変更しなければならなかった。この時も修正できないままプレスを強行して傷口を広げたのだが、修正するならポジション変更が必要なので選手だけの判断でやるのは難しかったはずだ。

 ただし、ハイプレスを諦めて撤退するなら別である。いったん撤退してゾーンを埋めてしまえば、噛み合わせの悪さはほとんど関係がなくなり、ポジション変更も必要ない。

 ベネズエラ戦でも撤退を決めることはできた。フィールド上のリーダーがプレスを止めて一時撤退を味方に伝えていれば、前半に4点も取られることはなかったと思う。キャプテンの柴崎に責任があるとすれば、その部分になる。ただし、ハイプレスを徹底するなら選手の独断でやるのは難しい。だから柴崎に全責任などあるはずがなく、あっても「半分」なのだ。

 試合中の修正ができないのは、日本代表の悪癖といっていい。

 例えば、2014年ブラジル・ワールドカップ(W杯)初戦のコートジボワール戦。相手のビルドアップにおける形状変化に対応できず、香川真司が1人で2人を相手にしなければならない状況に陥り、左サイドをセルジュ・オーリエに蹂躙されている。

 本田圭佑と大迫勇也が相手の2人のセンターバックにプレスしていたが、MFから1人下りてきているのでプレスにならない。ベネズエラ戦とほぼ同じ状態。にもかかわらず、日本はDFを1人余らせようとしていたのでハマるわけがなかった。前は手遅れなのに強引にプレス、後ろはすでに腰が引けていた。

 2010年南アフリカW杯のデンマーク戦は、珍しく修正ができたケースである。やはりビルドアップの形状変化に戸惑っていたが、遠藤保仁が守備プランの変更をベンチに伝えて修正した。後で見直すと遠藤の修正案もベストとは言えないのだが、とりあえずでも解決策が出たことでチームは落ち着きを取り戻している。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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