ビジャがJリーグで魅せた珠玉の“ダブルタッチ弾” 引退目前の37歳FW、カッコ良さに脱帽
今季限りでの引退を発表、Jリーグで最も印象に残った清水戦での一撃
ヴィッセル神戸のFWダビド・ビジャが今季限りでの引退を発表した。本人も「天皇杯が残っている」と言っているので、振り返るのは少し早いかもしれないが、Jリーグでのビジャで印象的だったのは第18節清水エスパルス戦でのゴールだ。
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後方からのロングパスをDFの間からオフサイドぎりぎりで飛び出して受け、そのまま抜け出してGKとの1対1を「ダブルタッチ」のシュートで決めた。
2人のDFの間で待っていて、ギリギリのタイミングで裏を突いたのがビジャらしく、その後のDFをブロックしながらのコントロールが触れているのか触れていないのか、足裏なのかアウトサイドなのか、なんか怪しいけれども、結果オーライというのもビジャらしかったかもしれない。
そして、なんと言っても最後のダブルタッチである。あれ以外の方法で蹴っていたら、GKに当てるか枠を外していたのではないだろうか。右足の強めのタッチでGKの守備範囲からボールを外へ動かし、すぐさま左足のタッチでシュート。右足のキックを自分の左足にぶつける「1人ワンツー」である。咄嗟にあれが出るのが、ビジャの真骨頂だろう。
ゴール裏からの映像で気付いたのだが、ゴールへ向かって走っていくビジャは吠えているように見えた。何か叫んでいるのか、たんに大きく口を開けているだけなのかは分からないが、それが一番印象に残っている。体に残っている野性を爆発させているように見えた。気を吐く、という感じ。
動物は危機に直面すると気を吐く。猫は全身の毛を逆立てて「シャー!」と威嚇するし、ライオンは咆哮する。犬は鼻にシワを寄せて唸りながら牙を剥く。普段は見せない恐ろしい形相になる。
ストライカーもゴール前の修羅場で野性を全開にする生き物だ。アンドレス・イニエスタが吠えながらプレーする姿は想像できないが、ビジャにはそれが似合っている。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。