敵将ジェラードも「感心した」と賛辞 21歳FW食野、日本代表より「マンC復帰」の思惑

食野はスター揃いのマンチェスター・シティに割って入れるか【写真:Getty Images】
食野はスター揃いのマンチェスター・シティに割って入れるか【写真:Getty Images】

日本代表にこだわらない食野が挑む“超一流中の超一流”への道

 しかし、それも無理もない、日本では代表選手にならなくては注目されない。プロとして、それは存在意義の問題でさえある。注目されなければスポンサーもつかない。実際、メディアも代表選手であるかどうかが取材の優先基準になっているし、記事の扱いの大きさも違う。

 しかしそんな状況で、食野は代表にこだわらないのだ。

 現在の食野のサッカー選手としての大目標――というより唯一の目標は、「マンチェスター・シティのレギュラーになること」の一点である。これはある意味、日本人選手としては革命的な意識ではないだろうか。

 日本サッカーもW杯初出場を果たしてから21年。今では多くの選手が、ヨーロッパを主戦場にしている。

 中田英寿を皮切りに、小野伸二や稲本潤一、中村俊輔から香川真司、岡崎慎司、本田圭佑の世代を通り過ぎて、新時代の始まりに見える現在の日本代表チーム。その予備軍と言える食野の世代になって初めて、「代表よりクラブ」というヨーロッパ基準の感覚が芽生え始めたのだろうか。

 ただし、逆説的には食野がシティのレギュラーとなれば、自動的に日本代表のレギュラーの座が転がり込むのは間違いない。なんと言ってもあそこは、今季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の優勝候補。代表チームで言えばブラジル、フランス、ドイツ、アルゼンチンといった存在に匹敵する。そこの一軍まで登り詰めれば、日本代表監督が放っておくわけがない。

 シティのレギュラーへの道――それは現在の世界のクラブサッカー界で、超一流中の超一流に登り詰める道であり、日本人選手でなくとも壮大な夢への道のりである。食野はその道筋をしっかりと見つめ、スコットランドで成長することをその第一歩としている。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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