急成長する“欧州視点”で見た「女子サッカーの未来」 現地を知る日本人指導者の提言
オーストリアで女子チームを指導していたモラス雅輝氏が語る「女子サッカーの現在地」
6月1日、開催国フランスが韓国に4-0と快勝して幕を開けた女子ワールドカップ。今大会はどのような大会になるのだろうか。そして、なでしこジャパン(日本女子代表)はどこまでいけるのだろうか。オーストリア・ブンデスリーガ1部所属ヴァッカー・インスブルックの女子チームで、監督とスポーツディレクターを兼任していたモラス雅輝(現・ヴィッセル神戸アシスタントコーチ)に、今大会の展望について聞いてみた。
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ヨーロッパ女子サッカー界をよく知るモラスは、今大会の優勝候補としてやはり開催国フランスの名前を挙げていた。
「やっぱりフランスが凄いかな。やっているメンバーも素晴らしいし、国内リーグのレベルも上がっている。代表メンバーに残っているのはみんな、パリ・サンジェルマンなど国内のビッグクラブか、国外のビッグクラブでやっている選手ばかり。例えばフランスリーグは、3つの強豪クラブとそれ以外との差が大きい。普段のリーグ戦よりもクラブ内の紅白戦のほうがレベルが高かったりする。そうした中でもまれている選手ばかりなのだから、やはりフランスは凄い。そこにドイツ、イングランドとかオランダが、どこまで張り合えるかというところでしょうか」
それにしてもここ数年、ヨーロッパを中心に女子サッカーは規模もレベルも上がってきている。その理由についてモラスは、丁寧に説明してくれた。
ヨーロッパではここ数年、男女平等に対する社会的な流れがどんどん強くなってきており、その影響はスポーツ界にも出てきている。また、ナイキやアディダスといったスポーツメーカーにとってはプロモートの対象として「女子スポーツをサポートする」というのは、非常に費用対効果が高いという。実際にこうしたプロモート活動により、スペインやイタリアでは4万人規模のスタジアムが満員になることもあるという。女子サッカーは注目を集めることができているし、企業にとってはこれ以上ないイメージアップだ。
お金が動くようになると、今度はそこから育成への投資が行われるようになる。各クラブ・協会がこれまで以上に女子サッカーへ力を入れ出し、小さい頃から理想的なサポートを受けて育つ選手が増えてくる。技術面だけではなく、戦術面でも認知面でも、レベルアップが進んでおり、この流れは今後さらに良くなっていくだろうと見られているようだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。