U-20W杯の日本は“大会屈指” 新時代の潮流に乗る「ボランチ&トップのフィジカル化」
U-20日本代表は欠点のない好チーム 中盤の攻防で輝きを放つ齊藤未月
ポーランドで開催されているU-20ワールドカップ(W杯)で、U-20日本代表は1勝2分でグループリーグを通過している。今回の日本代表は、これまでつきまとっていたコンタクトプレーの弱さ、決定力の低さ、高さ不足といった欠点がない。素早いプレッシングとパスワーク、運動量に秀でた今大会の好チームの一つだ。
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全部を見たわけではないが、今大会は日本のような真面目なハードワークのチームが多い。逆にスーパーなタレントは見かけないが、数年後には彼らが第一線で活躍すると考えると、ここで行われているプレーに未来のサッカーの一端が窺えるはずだ。
各ポジションに求められる資質は、変化しているように感じる。変化というより、従来の能力にプラスアルファが求められている。
例えば、ボランチにはよりアジリティーが求められている。すでにGKのビルドアップ能力は特別なプラスアルファではなくなっていて、今大会はゴールキックをペナルティーエリアで受けることが許される新ルールが採用されていることもあり、ゴールキックからパスをつないでいくチームが多い。同時に、守備側はそこからプレスではめていこうとする。最深部からのビルドアップとハイプレスの攻防が発生しやすくなっているわけだ。
中盤で相手の攻撃を遅らせる、限定するという守備はもちろんあるが、ハイプレスにかかった時の中盤は、そこでボールを奪いきるためのエリアになっている。ここでファウルになっても守備側には痛くないので、当たりの激しさはゴール前よりもむしろ容赦がない。そこでの攻防が試合展開を左右するため、ボールホルダーや周辺へ寄せていく動きの素早さが求められている。
一方で、ハイプレスを仕掛けていく時はディフェンスラインも押し上げているので、攻撃側がこの素早い寄せを外してしまえば、一気に前方の視界が開けてカウンターのチャンスにもなる。相手のプレスを外して、グッと5メートル前へ運ぶ力強さ、速さのあるMFがいると、この攻防で優位に立てる。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。