リバプールに奇跡を呼んだ“魔力” アンフィールドの観客は単なる「お客さん」ではない

アンフィールドは、スタジアムが束になって敵に向かって行くような迫力がある【写真:AP】
アンフィールドは、スタジアムが束になって敵に向かって行くような迫力がある【写真:AP】

CL準決勝でバルセロナに奇跡の大逆転勝利 伝説の名将が築いたファンとの深い絆

 リバプールのホームスタジアム、アンフィールドは「ライオンの巣穴」と表現されたことがある。そこへ入ったら生きて帰れる気がしないネーミングだ。フィールド上の選手だけでなく、スタジアムが束になって敵に向かって行くような迫力がある。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝の第2戦で、バルセロナに対する大逆転が起こったのも、アーセン・ベンゲルの言葉を借りれば「そこがアンフィールドだから」である。

 マリオ・バロテッリ(現マルセイユ)がプレーしていた時、ある試合でバロテッリが競り合いで飛ばされてフェンスのところまで転がり落ちた。イングランドのスタジアムは水はけを良くしようとして傾斜がきつく、タッチラインからフェンスまでは坂のようになっている。フェンスに叩きつけられたバロテッリが飛び起きようとした瞬間、フェンスの向こうから手が伸びてきて体を抑えた。頭に血が上りやすいバロテッリを、そのままフィールドに返したら報復行為間違いなし――そう思ったファンが機転を利かせて、捕まえたのだ。

 時間にすれば数秒間にすぎないが、その間にファンはバロテッリを口々に激励し、なだめていたようだ。少しの冷却時間を経過させた後、“さあ行け!”と背中を押して送り出していた。

 アンフィールドの観客は、単なる「お客さん」ではない。選手と一緒に戦う仲間で、彼らの距離感は他のスタジアムと比べられないぐらい近い。試合中に携帯をいじっている人もいないし、食べたり飲んだりしている人も少ない。それは少し前の、イングランドのスタジアムにおける雰囲気なのかもしれない。チケット代が信じられないぐらい高価になる前の――。

 ある日、ビル・シャンクリー監督は上から下まで真っ赤っかのユニフォーム一式を会長に見せた。

「どうです、恐ろしいでしょう?」

 それからリバプールのユニフォームは、現在の赤になった。シューズ置き場を改造した会議室(ブートルーム)では、後に黄金時代の監督となるボブ・ペイズリー、ジョー・フェイガンなどのコーチングスタッフと日夜議論を重ねた。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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