マンUは真の復活を遂げたのか? 元主将OBが訴え「サッカーを知る人間に決定権を」

モウリーニョ氏の退任は、“魔の3年目”としか言いようがない結果となった【写真:Getty Images】
モウリーニョ氏の退任は、“魔の3年目”としか言いようがない結果となった【写真:Getty Images】

監督を交代した程度ではユナイテッドの未来は簡単に好転しない?

 実際、ファーガソン監督の退任後、コマーシャル担当の重役だったリチャード・アーノルド氏は、2013年7月、そのスポンサー料増収の実績を後ろ盾に、弱冠42歳で経営権を持つ取締役に昇進した。そのアーノルド氏の本業は会計士である。

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 もちろん、現在の欧州サッカー界において資金力は不可欠だ。クラブの名声に乗ったとはいえ、潤沢な資金を稼ぎ出す人材は貴重である。一流選手の移籍金は高騰するばかり。例えば、昨年1月にリバプールが補強したDFフィルジル・ファン・ダイクの移籍金は日本円にして約112億5000万円。DFでも優勝のカギを握る選手の獲得には、100億円を超える金額が必要な時代である。

 ただし、やはり補強の原点はチームにとって欠けている、もしくは足りない戦力的なピースを埋めるものであって、人気やイメージを先行するのは本末転倒だ。ましてや人気選手を使って、新スポンサーのお披露目セレモニーを盛り上げるような接待は論外だろう。

 モウリーニョを切ったユナイテッドは、今季限りの暫定監督としてスールシャールを起用した。この人事も、実績より今もサポーターに根強い人気を誇る“1999年トレブル”のアイドルを利用し、5年半で3人の有名監督をお払い箱にしたクラブ経営陣への批判をかわす人事だと見るのは行き過ぎか。

 ノルウェー人青年監督が率いるチームは、公式戦10戦無敗(9勝1分)の快進撃を続けており、モウリーニョ解任の暗黒を吹き飛ばしたかのようにも見える。

 しかし、これほどの古巣愛に燃えるネビルの必死の訴えを聞いてしまうと、莫大な広告料を飲み込んで巨大化し、ファーガソン監督に集中していた権威と決定権が分散した今、監督を交代した程度ではユナイテッドの状況は、そう簡単に好転しないのではないかと思う。

 このままスールシャールが正式監督に就任するにしても、ブックメーカーの本命に推されているトットナムのマウリシオ・ポチェッティーノが後任となっても、クラブ全体が初心に戻らなければ問題は解決しない。ファーガソン時代のように経営陣、現場、サポーターが一丸となり、試合に勝つことを最優先事項として新たな監督の下に結集しなければ、あの強い「マンチェスター・ユナイテッド」の復活はいつまで経っても実現しそうにない。

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(森 昌利 / Masatoshi Mori)



森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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