デシャンに見るフランス代表の20年 “持っている男”が取り戻させた威厳と勝利の味

デシャンの頭上には「勝利の星が輝いている」

 中盤の要であるMFポール・ポグバは、デシャンの頭上には「勝利の星が輝いている」と言う。

「それはほんの一握りの監督にしかないものだ。彼は選手としても成功しているから、僕らを理解してくれるし、自分が伝えたいメッセージをどう選手たちに伝えるかを知っている」

 エースのFWアントワーヌ・グリーズマンも、「彼自身が多くのものを勝ち取ってきたから、そこに到達するための道のりを知っている。僕らは彼のことを信頼しているし、彼のためにプレーしている」と、絶大な信頼を口にする。

 前回大会ではエースとして信頼を授けたFWカリム・ベンゼマの招集を、数々のスキャンダルの影響を考慮して断念したのも、デシャンにとっては苦渋の決断だったが、レ・ブルーのイメージを優先させてのこと。同じくナスリも14年大会ではメンバーに呼ばず、彼のガールフレンドからSNSで「クソジジィ」と罵られた。

 デシャンがメンバー選考において最も重要視したのは、実力よりもまず「調和」だった。お互いがハーモニーを奏でられる関係性を築けること。そうして、「チームの輪」を最優先に選んだ今大会のメンバーは、デシャンの人選眼が正しかったことを証明した。

 DFバンジャマン・パバールやDFリュカ・エルナンデスといった、W杯予選後に初招集された新メンバーも見事チームにフィットして大活躍。年長のGKウーゴ・ロリスやFWオリビエ・ジルーから、ティーンエイジャーのFWキリアン・ムバッペまで、控え組も含めて完璧に調和のとれたメンバー構成のもと、一戦一戦をこなすごとに成長する理想的なチームを作り上げた。

 と、ここまで背景を並べてきたが、究極的には、デシャンは“持っている男”だということに尽きる。決勝戦のクロアチア戦でのラッキーな最初の2得点だけでなく、この大会中、「相手のほうが強かった」という試合をフランスは勝ち抜いてきた。的確な戦術と試合中の采配、選手の努力を過小評価するつもりはないが、デシャン監督は間違いなく、勝利の女神に愛されている。

 やはりフランスは、彼ありきで今大会に優勝したのだ。

(小川由紀子/Yukiko Ogawa)



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