女子サッカーを日本の文化に なでしこ宮間の挑戦はリオへと続く

「ブームではなく文化に」

 大会前の下馬評は決して高くなかった。だが、そこから今大会6試合連続で1点差の勝利を収め、頂上決戦にたどり着いた。世界2位は偉大な成績だが、「W杯優勝と、準優勝では違うので本当に申し訳ない」と再び謝罪の念を口にした。
 身長157センチという宮間の小さな体には崇高な使命感が詰まっていた。試合前の記者会見では「前回(2011年ドイツ大会)優勝し てから、女子サッカーへの関心や興味を持ってもらえるようになりました。とはいえ、このW杯前には、国内リーグの女子サッカーに関心が薄れてしまっていました。その中で、この大会で結果を残すことが、これから先の女子サッカーを背負っていく選手や、これからサッカーをやろうという少女たちに残せることだと思っていました。そこに立ってからこそ、ブームではなく文化にできるようにスタートが切れるのではないかと思います」と言葉を重ねていた。
 11年ドイツ大会優勝後、なでしこリーグの入場数は一気に膨れ上がった。だが、ここ数年は観客数が落ち込んできた。女子サッカーを日本の文化に根付かせるには、勝たなければ注目を集め続けることはできない。その責任感を帯びて、日々の練 習に全力で取り組んできた。同僚と咤(しった)激励しあい、自らの技術も磨きかけてきた。日本のサッカー界に、ここまで危機感を持ちながら日々を過ごしている人間が他にいるのだろうか。
 仲間を思う主将は、「自分だけじゃなく、難しい試合になったが、全員がチームの為に戦えた」と少し胸を張った。なでしこの鬼気迫る終盤の猛攻について、「ひとりでも多くの方にそう言っていただけたらうれしい。なでしこはまだまだ続いていくと思うので、これからも皆さんに応援してもらえるようなチームでいられるように頑張りたい」と未来に目を向けた。
 2011年の栄光から4年間で手にしたものは「最高の仲間だと思います」と語るキャプテン。インタビュー中、必死にこらえてきた悔し涙はあ ふれ、ほほを伝った。圧倒的な求心力を誇る主将は2016年に行われるリオデジャネイロ五輪で再び頂点を目指す。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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