イングランド代表は7日、ダブリンのアビバ・スタジアムでアイルランド代表と国際親善試合を行った。民族問題による過去の抗争などの影響で、イングランド代表にとっては20年ぶりのアイルランド遠征となったが、試合は0-0で無事終了した。 だが、この日、最も話題をさらったのは、敵地アビバ・スタジアムにやってきたゴール裏の3000人のイングランドサポーターたちだった。彼らのチャントが大きな反響を呼んでいるのだ。 「ゼップ・ブラッター! あいつがおまえらのグラウンド代を払ったんだ!」 FIFA前会長は、W杯招致に関連する収賄疑惑 などのスキャンダルの高まりを受けて、辞任を表明した。その名前が快晴のダブリンの空に何度も、何度もこだました。 このチャントの発端となったのは、4日のアイルランドサッカー協会ジョン・デラニー専務理事の発言だ。 2009年に行われた南アフリカ・ワールドカップのプレーオフで、ティエリ・アンリ氏がハンドを犯したが、その後もプレーは続行。アンリ氏のアシストからフランス代表は、決勝点を挙げて本大会進出を決めた。この試合後、アンリ氏もハンドを認め、アイルランド側も再試合を要求したが、FIFAはこれを認めず。その代わりに、FIFAはスタジアム建設費として500万ドルを支払ったという。そして、理事は、このことを明かし、アイルランド側はアビバ・スタジアムの建設費に充 てたとも説明していた。 決戦の舞台となったアビバ・スタジアムが、FIFA腐敗の根源ともみなされているブラッター会長によって完成したことを、イングランドサポーターはやゆした揚げ句、「ティエリ・アンリ! ティエリ・アンリ!」というアーセナル時代のコールも連呼していた。 試合はイングランド代表がシュート数14対8、ポゼッション率では63%と優位に進めながらも、スコアレスドローに終わった。だが、アウェーの地にやってきたサポーターはすっかり留飲を下げた様子だった。 【了】 サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images