【サッカー分析講座⑦】総走行距離よりも顕著な差が出やすいスプリントの距離 1試合のスピードの最速値は意外な選手が記録することも

小笠原が見せる「ここぞ」という場面での速さ

 

 攻撃する側は、ただ走る距離を長くすることではなく、いつどのタイミングで相手ゴールに向かってスプリントするかが大事だ。守備側はそういうタイミングを作らない守備、ボールプレーヤーへの素早いアプローチやスペースを与えないポジショニングの意識が重要となる。

 次に、スプリントの距離とは別に、スピードそのものはどんなものかを見てみたい。ここで見るスピードはいわゆる瞬間最速スピードだ。テレビでも紹介された2010年のJリーグ14試合のトラッキングデータによると、最も瞬間最速スピードが速かったのは鹿島アントラーズの小笠原満男の時速35.1 kmだった。単に足が速いというイメージからすると多くのJリーグファンの感覚と異なっていると思う。

 時速何kmという数字のイメージをつかんで頂くために、まずは分かりやすく世界最速のアスリートのスピードを紹介してみたい。ウサイン・ボルト(100m 9秒58)の100m平均時速は37.6kmだが、瞬間最速時速は44.6kmだ。この44.6kmの最速値に相当するのがランキングで紹介したデータだ。世界最速ランナーと比較すると時速約10km近く遅くスピード自体はさほど驚くものではない。

 このデータは単純な足の速さではなく、試合で「ここだ!」というタイミングで走り込んだ際のスピードを示している。攻撃の選手はゴール前に飛び込む時、ディフェンスの選手は相手に対して飛び込む時や裏へのボールを追いかける時にスピードが上がる傾向がある。

 小笠原選手が1位というのは意外かもしれないが、中盤でここぞという時のアプローチの速さ、2列目から飛び込む時のタイミングなどを見てみると、なるほどと思う人もいるかもしれない。ワールドカップやチャンピオンズリーグなどの世界的な大会ではその大会の公式ホームページで様々なスタッツを紹介している。その中で走行距離やスピードのデータを見ることが出来るはずだ。そこで上位にランクされた選手がどういうタイプの選手で、試合中どこでトップスピードのスイッチを入れるのかという視点で個々の選手のプレーを見ても面白いかもしれない。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

 

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