ファン・ハール監督はいかにしてマンUを復活させたのか 3つのポイントとは?

勝負強さと公平性を一貫

 イングランドにおいて、20回のリーグ優勝を誇るクラブは、マンチェスター・ユナイテッドのみだ。UEFAチャンピオンズリーグ優勝も3度と、世界でも見ても指折りのメガクラブだ。しかし、そんなマンUが昨季、欧州の舞台に立つ資格を失った。プレミアリーグが誇る名門は、その輝きを失うことになった。

 危機的な状況の中、クラブは今季よりルイス・ファン・ハール監督を招聘。オランダの名将は、昨季リーグ戦7位に終わった失意の強豪の再建を一任されることとなった。序盤戦こそ苦戦を強いられたものの、着実に立て直しを施し、いまや3位と、優勝も射程に入れるほどの位置につけている。果たしてファン・ハール監督はどのようにしてマンUを蘇らせたのだろうか。その復活劇には3つのポイントがある。

 1つ目のポイントは、ファン・ハール監督の「勝負強さ」にある。今季のマンUは、上位7チームとの対戦で最も優れた成績を残している。

 アウェーのチェルシー戦とホームのアーセナル戦をまだ消化していないが、これまでの上位陣との対決は、6勝2分2敗と、リーグ戦の命運を分ける重要な「シックスポインター」に位置づけられる試合で無類の強さを誇っている。

 これらの大一番で勝ち切る勝負強さは、マンUに13度のリーグ優勝をもたらしたサー・アレックス・ファーガソン氏の真骨頂でもあった。ファン・ハール監督はこの“ファーガソンイズム”を兼ね備えていることを証明しつつある。

 そして、2つ目のポイントは「公平性」。マンUは今季、約270億円という巨額を投資し、大型補強に乗り出した。特に話題を呼んだのは、2人のスーパースターの獲得だ。

 MFアンヘル・ディ・マリアをレアル・マドリードから約108億円で獲得。ASモナコ所属のFWラダメル・ファルカオとは年俸約25億円という待遇で1年間のローン契約を結んだ。両者ともマンUに迎え入れられた条件は破格なものとなった。

 しかし、ファン・ハール監督は、補強の目玉となったディ・マリアとファルカオを中心としたチーム編成には着手しなかった。事実、今季の命運を分ける重要なリバプールやマンチェスター・シティとの大一番でも、両者を先発で起用することはなかった。クラブが巨額を投資して揃えた即戦力を起用しないことは、あらゆる面でリスクをはらむことになる。だが、それでもオランダ人指揮官はあくまで公平性を貫き、自身が要求する哲学に適応できる選手を抜擢してきた。その公平性が、チームの中に競争心と危機感を植え付けたことは間違いない。

 

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