ブラジル戦若手起用は「英断」か 開催不透明なアジア杯…不測の事態に揺れる森保Jへ「ベストの選考を」

11月に控えるブラジル戦とパラグアイ戦
10月23日、アジアサッカー連盟(AFC)の臨時総会が開催されたが、アジアカップの開催については結論が出なかった。
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2027年1月?2月にアジアカップを開催する予定になっているサウジアラビアは現在、空港でテロ行為が発生するなど情勢が不安定になっている。10月22日には外務省が危険情報を「レベル3 渡航中止勧告」に引き上げた。そのため予定の時期での開催が危ぶまれていたが、開催可否の決定は11月中旬にタイで開催されるAFC理事会での結果を待つことになった。
この日、開催が決まらなかったことは日本代表に大きな影響をもたらした。11月にシンガポールで開催されるブラジル戦、パラグアイ戦の位置づけをどうするかという点が決まらないのだ。
本当ならば現在は次回のワールドカップに向けてもう一度大きく網を広げ、有望な選手たちを見つける段階のはず。実は過去に同じようなシチュエーションで日本代表がブラジルと戦ったことがある。
2014年ブラジルワールドカップが終わり、ハビエル・アギーレ監督の下でチーム作りが始まって4試合目、日本は10月14日に今回と同じシンガポールのナショナルスタジアムでブラジルと対戦した。
そのときの招集メンバーはどうだったか。川島永嗣、長友佑都、吉田麻也(ケガで不参加)、香川真司、岡崎慎司、本田圭佑という2014年大会の主力選手はもちろんいた。だが、フィールドプレーヤーで出場経験3試合以下という選手が、水本裕貴、太田宏介、西大伍、塩谷司、昌子源(ケガで不参加)、田中順也、森岡亮太、柴崎岳、小林悠、武藤嘉紀、田口泰士(追加招集)、鈴木大輔(追加招集)と12人も含まれていたのだ。
ブラジル戦の先発にも、太田、塩谷、田中、田口、森岡、柴崎、小林が含まれていた。この試合はネイマールに4点を奪われ0-4で敗戦し、「せっかくのブラジル戦になぜこのような起用をしたのか」という批判が起きた。
それでもアギーレ監督の考えは明確だった。目の前の勝利よりも4年後に向けてチームを作っていたのだ。なお、2014年はその後11月にホンジュラス、オーストラリアと戦っているが、6-0、2-1と勝利して成果を出した。
今回、もしアジアカップが延期になると決まっていたら、このブラジル戦も同じように若手選手を試す場所として絶好の機会となる。だが開催時期が決定していない現時点では、大会が開催されるものとして勝つための準備試合にせざるを得ない。
また、FIFAランクを少しでも上げることが命題となっている現在の森保ジャパンにおいて、ブラジルやパラグアイは勝ってポイントを大きく積み上げたい相手なのだ。そうなると若手を試すための試合ではなくなる。若手を発掘して最初の試練を与えるという将来を見越した試合にはならない。
しかし日本代表の未来を考えたとき、どちらがいいのだろうか。私には、たとえアジアカップの準備が遅れたとしても、まだまだ経験不足が目立つ若手をブラジルにぶつけたほうがいいように思える。もし若手ばかりのチームで90分戦ったら、たとえどんな結果になっても「英断」ではないだろうか。
一方で、感情的にはベストの選手選考で勝ってほしいとも思う。というのも、もしもアジアカップが延期された場合、森保監督のラストマッチが今回のシンガポールでの2試合、ブラジル戦とパラグアイ戦になる可能性があるからだ。
森保監督の任期はあくまで来年1~2月に開催されるアジアカップまで。大会が延期されたのに伴い任期を延ばすことは、今度は大岩剛次期監督のチーム作りの時間を削ることを意味する。
12月30日にも日本代表戦が予定されているものの、これはアジアカップへの壮行試合としての色合いが強い。しかもインターナショナルマッチデーでもない日に海外組を招集するのは厳しく、また天皇杯の準決勝が12月27日に開催されることを考えると、ベスト4に残ったチームの選手を起用するのは苦しい。決勝戦に進出したチームからは招集もできないだろう。そういう状況を考えるとアジアカップが延期された場合に12月30日の試合を行う意義が失われてしまう。
ここまで8年にわたって日本代表を牽引してきた監督の最後の試合は、何が何でも勝ってほしいと思うのだ。ブラジル戦やパラグアイ戦までにアジアカップがどうなるか結論は出ていないかもしれないが、あとから振り返ったときに「最後の2試合にもしっかり勝った」と言われてほしいと願う。森保監督が勝負において、一切情緒的でないのは知っているのだが。
今回のアジアカップを取り巻く事態は「中東情勢の緊迫化」という外部要因であり、サッカー界の誰かに責を問えるものではない。だが、先行きが見通せない複雑な状況だからこそ、ピッチ上の結果でモヤモヤを吹き飛ばしてほしいのだ。2014年のように悔いを残すことなく、選抜された選手たちがピッチで躍動し、8年を率いた指揮官のためにも、ブラジルをしっかりたたきのめして勝利を届けてほしいと願うばかりだ。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。






















