日本代表の“スペイン化”を巡る現在地 独自のスタイルに「正解はあるか」 …突きつける現実は「模倣するしか」

北中米W杯を制覇したスペイン代表【写真:ロイター】
北中米W杯を制覇したスペイン代表【写真:ロイター】

スペイン化、それともオリジナルの追求か

 スペイン式か和式か。2026年ワールドカップにスペイン代表が優勝したこともあり、日本代表もスペイン化してみたらどうかという意見がある。一方で、日本には日本の良さがあり、オリジナルのプレースタイルを追求すべきだという声もある。

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 では、スペイン式のプレーと何だろうか。

 現在のスペインのプレースタイルはそもそもオリジナルではない。いわばオランダからの輸入だ。オランダというよりアヤックスのスタイルをヨハン・クライフ監督がバルセロナに持ち込んだのが始まりだった。当初はかなり異色だったのだが、年月を経て20年が経過するとジョゼップ・グアルディオラ監督の下で完成版と言えそうなものが出来上がった。スペイン代表はそれを採り入れたのであって、現在のスペインのフットボールはほぼバルセロナと言っていい。

 長所は関係性である。個人能力が特別に秀でているというより、選手間の関係性が非常に優れている。それは洗練されたパスワークや連動した守備に表れている。

 システム自体に秘密はない。攻撃は4-3-3、守備は4-4-2。ざっくり言えばポゼッションに向いた4-3-3と前進守備に適した4-4-2の組み合わせだ。戦術的にはシンプルで適材適所の選手が揃えば威力を発揮しやすい。

 正解のあるフットボールだ。「正解はない」とよく言われるが、スペインは彼らの正解を持っている。自分たちのやり方においての正解を決めている。違う言い方をすると論理的。理詰めなので伝達しやすく、育成面でのアドバンテージにもなっている。

 例えば、MFはそれぞれ特徴の違う6番、8番、10番で構成されることが決まっている。スタイルが一貫しているなかで、それを成立させる6番、8番、10番が途切れなく育成される。全体が先に決まっていて、そのためのパーツを作り続けているような感じだろうか。パーツを集めてから、さて全体をどう組み立てようかという悩みとは無縁。育成に無駄がない。

 スペインのプレースタイルは今やワールドスタンドードになっていて、W杯ベスト4のうちスペイン、フランス、イングランドはほぼ同じ。クラブチームではさらにスタンダード競争になっている。もちろん国によって違いはあるが、ソース味、しょうゆ味、塩味の違いはあっても同じ焼きそばというのに近いかもしれない。

 他国がスペイン式を採り入れた場合の重大な問題は、どこもスペインほど上手くやれないということだ。

 このスタイルでの年季の違いがあるわけだが、さらに差を生み出しているバルセロナの存在がある。このスタイルの元であり、過去も現在も多くの代表選手を輩出している。ロドリ、ペドリ、ダニ・オルモのMFはそのままスペイン代表で、パウ・クバルシ、ラミン・ヤマルなど多くの代表選手がいる。いわば日常的にトレーニングする代表チームであり、これは類がない。ドイツにバイエルンがあるくらい。連係という強みがさらに増強されるサイクルは決定的で、他国が追いつけない理由の1つである。

 日本は日本の特徴を活かしたプレーをすべきだというのは正論だ。

 ただ、日本のオリジナルは何かを具体的に説明できる人がいるだろうか。これが我々の正解だと細部、全部の両面で言い切れるだろうか。

 もしそれがないなら、スペイン式を模倣するしかないのではないか。失敗例は事欠かないし、そもそもスペインに勝てないのは世界一を目指すにあって決定的な弱点ではあるが、ほかに何があるのか疑問である。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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