日本代表が傑出していた数値とは? GS全72試合のデータから見えた、W杯で目指すべき戦い方
![[図表1]走量では差がつかず、xGや枠内シュート、敵陣最終局面での受け、被xGで大きく差が開いた。出典:FIFA WORLD CUP 2026「Post Match Summary Report」のデータをもとにAIで作成](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2026/07/04193543/20260704_data1_morimoto.jpg)
連載「北中米ワールドカップData Lab.」第8回、グループステージの戦いを総括
北中米ワールドカップ(W杯)の激闘の裏側で、何が起きているのか――。史上初の3か国共催、出場48チームが全104試合を戦う世界最高峰の舞台を、FIFAが試合後に公開するデータを最新AIで読み込みながら、アナリストが分析していく連載「北中米ワールドカップData Lab.」。今回は今大会の傾向を数値から探るうえで、全出場国が同じ3試合を戦ったグループステージ72試合について、FIFA公式データ「Post Match Summary Report」を集計して分析。すでにベスト32の戦いが始まっているが、北中米W杯における世界的な流れと、日本が2030年大会以降で目指すべきサッカーの姿が見えてきた。(文=森本美行)
【PR】ABEMA de DAZN 学割キャンペーン、最初の3ヶ月・月額980円で国内外の世界最高峰サッカーコンテンツが視聴可能に!
◇ ◇ ◇
出場48チームが全104試合を戦う今大会のうち、グループステージ終了時点で72試合を消化した。32チームが決勝トーナメントへ進み、16チームが姿を消した両者の間に、運命を分ける傾向はあったのか。その答えを探すために全試合のデータを解析した時、最初に目に留まったのは、意外にも「差がつかなかった指標」のほうだった。
グループステージを突破した32チームと敗退した16チームの1試合平均の総走行距離を比べると、突破したチームの平均111.99kmに対し、敗退したチームの平均は112.40km。同じく1試合平均の高速ランニング(Zone4の距離)を比べてみても、5.68km対5.69kmといずれも僅差で、むしろ敗退チームのほうがわずかに多く走っていた。勝ち点との相関も総走行距離「-0.12」、高速ランニング「-0.06」と、統計的にはほぼ無相関の水準だった(図表1参照)。
「走り負けた」という言葉は、少なくとも今大会のグループステージでは勝敗の説明にはならない。大事なのは“量”ではなく、「どこで、なんのために走ったか」という“質”だ。事実、後述する「敵陣最終局面でのボール受け」は、突破チームが敗退チームを4割上回った。同じ距離を走っても、危険なエリアで受ける動きに変換できているかどうかが、重要な分かれ目だった。
![[図表2]赤が多いほど勝者の勝ち、青が多いほど負け。xG差が頭一つ抜けた。出典:FIFA WORLD CUP 2026「Post Match Summary Report」のデータをもとにAIで作成](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2026/07/04193541/20260704_data2_morimoto.jpg)
ロングボール&ローブロックの“弱者の戦術”は得失点差と負の相関
次に勝敗・得失点と各指標の関係を、全72試合で相関を取って並べた。ここで使う中心の物差しはxG(ゴール期待値)である。「自チーム−相手チーム」のxGという指標差と得失点差の相関関係が最も強かった。
これまでの数十万本と言われるシュートサンプルから導き出した指標なので、得失点との相関が高いのはある意味当然だ。攻撃のxGそのもの(+0.67)と、相手に作らせた被xG(−0.67)が、攻守それぞれの軸として同等に効いていた。一方でカウンター局面と得失点の相関は+0.06と非常に低く、ロングボール・ローブロックといった弱者の戦術とは負の相関(-0.36〜-0.39)だった。
力関係で劣るチームは「カウンター」や「とにかく守って奪ったら前に蹴り込む」という戦術が機能するといった通説は、本大会のこれまでのデータでは支持されていない。勝敗は結局、xGという「得点機会の質×量」に収束した。
突破32チーム vs 敗退16チームの平均を攻守で見ると、攻撃ではxG(1.46対0.84=+73%)、枠内シュート数(4.8対2.8=+72%)、敵陣最終局面での受け数(130対93=+40%)で大きく上回る。サッカーの試合では得点を取ることと同じくらい、得点を取らせないことも重要だ。相手の得点機会の確率を測る指標である被xGは突破1.00に対し敗退1.75と、敗退チームは突破したチームより75%も多く得点機会を与えていたことになる。
突破の条件は得点機会を「多く作る」だけではなく、「作らせない」守備設計も大事だということだ。日本の被xG「0.40」がグループ最少だったことは、今後のW杯での戦い方を決めるうえで大事なポイントになるはずだ。
![[図表3]内容(xG差)vs結果(勝点)。点線より上=運・決定力で稼いだ、下=報われず。クロアチアが点線に対して最も上、トルコ、ウルグアイが最も下に位置する。出典:FIFA WORLD CUP 2026「Post Match Summary Report」のデータをもとにAIで作成](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2026/07/04193539/20260704_data3_morimoto.jpg)
3戦合計xG差で上回りながら報われなかった2か国
得失点差とxG/被xG差の相関が高かったので、次はチーム単位で「3試合の累計xG差」と「実際の勝ち点」の乖離を見た。内容(xG差)が良いのに勝ち点が伴わなかったチームと、その逆が浮かび上がる。
最大の“上振れ”はクロアチアだ。累計xG差は相手が2.6多かったが、勝ち点6を挙げてグループステージを突破した。逆に最も“報われなかった”のはトルコとウルグアイだった。トルコは2試合のxGで相手を上回りながら、グループステージで姿を消すことに。(0-2豪州/xG1.66対0.99、0-1パラグアイ/2.13対0.36)。
そういうケースもありながら、xGで上回ったのに勝てなかった試合は72試合中15試合だった。その15試合にはスイスのxG3.14対0.52でカタールと引き分け、スペイン2.26対0.13でカーボベルデと0-0、そして1.22対0.56でスウェーデンと引き分けた日本の試合も含まれる。
1試合単位では決定力や運で“上振れ・下振れ”が頻発する。だが、試合を重ねれば偶然は薄まり、莫大なデータから算出されたxGという“確率”へ収束していく。つまり、内容が良くスコアが伴わなかった強豪は、グループステージでの調整期間を通して本来の実力に戻していくことになる。しかしクロアチアのように3試合を通して“運で勝ち上がったチーム”は、ノックアウトステージで真価を問われることになるだろう。
フランス(勝ち点9/得失点+8)、アルゼンチン(9/+7)、メキシコ(9/+6)、スペイン(7/+5)など、順当に勝ち抜いた各組1位は、いずれも「高xG・低被xG」だった。
一方、F組を2位で突破した日本は支配率46%、平均xG「0.97」と攻撃に関しては比較的地味な数値だったが、前述のとおり被xG「0.40」はグループ最少だった。日本代表を語る時、上田綺世の得点力、中村敬斗のシュート技術、伊東純也や前田大然のスピード、鎌田大地や久保建英、堂安律のスキルやセンスなど攻撃面に目が向くことが多いが、日本の誇るチームワークや規律、そして今大会で力を注いだ分析は、攻撃よりむしろ守備面で力を発揮したようだ。
決勝トーナメント1回戦でブラジルに1-2と敗れ、ベスト32で姿を消すことになった森保ジャパン。今大会で日本は通算5度目のグループステージ突破を果たしたが、いまだノックアウトステージでは勝利をつかめていない。2030年大会以降、まだ見ぬ景色を目にするためには、相手の攻撃機会を極力減らす守備力をベースに、攻撃時には個々の日本人選手が持つ素晴らしい才能を美しく調和させられるかが、あらためて問われている。
(森本美行/Miyuki Morimoto)
森本美行
森本美行
もりもと・みゆき/1961年生まれ。92年米ボストン大学経営大学院でMBAを取得。2002年にスポーツデータ配信や分析を行うデータスタジアム株式会社の代表取締役に就任。16年には日本初の野球独立リーグ四国アイランドリーグplusを運営する株式会社IBLJの代表取締役及び一般社団法人日本独立リーグ野球機構の常務理事を務めた。またJリーグのヴィッセル神戸や東京ヴェルディ1969、京都サンガF.C.などでトップチームのアナリストを歴任。鈴鹿ポイントゲッターズや慶応義塾大学体育会ソッカー部などでは、コーチとして選手を指導した。現在は横浜FCでデータ戦略アドバイザー、ヴィアティン三重のデータアナリストを務めている。

















