東京世代とともに歩み続けた8年間 痛感した個人の“差”…成し遂げるべきステップアップ

北中米W杯に挑んだ森保ジャパン【写真:徳原隆元】
北中米W杯に挑んだ森保ジャパン【写真:徳原隆元】

ブラジル戦の逆転負けで見えたことを総括

 FIFA北中米ワールドカップ(W杯)で、森保ジャパンは強豪ひしめくグループを突破したものの、決勝トーナメント1回戦でブラジルに敗れベスト32で大会を去った。先制したものの後半に押し込まれ、逆転を許したブラジル戦で見えてきたのは、またしても個の力の不足だった。森保ジャパンの中心であり続けた東京五輪世代の歩み、そして今後の課題を総括する。(文=元川悦子/全3回の2回目)

【PR】ABEMA de DAZN 学割キャンペーン、最初の3ヶ月・月額980円で国内外の世界最高峰サッカーコンテンツが視聴可能に!

 北中米W杯は森保一監督体制8年間の集大成でもあった。その中心的な役割を担ったのが、97年生まれ以降の東京五輪世代だ。今回のメンバー26人のうち、同代表の活動に招集されたことがある選手は13人。ケガで大会を棒に振った町田浩樹(ホッフェンハイム)や三笘薫(ブライトン)らを含めると、実に半数以上が「森保監督が手塩にかけて育てた選手たち」だったのである。

 改めて思い起こしてみると、指揮官が東京五輪代表監督に就任したのは2017年11月。同年12月のM-150カップ(タイ)が最初の国際大会だった。そこに呼ばれていたのが、三笘、上田綺世(フェイエノールト)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)の3人。彼らにしてみれば、足掛け10年間も指揮官と共闘してきたことになる。

 そして森保監督は翌2018年8月からはA代表監督を兼務。そのメリットを最大限生かして若い世代の積極登用を推し進めていった。

 初期段階では堂安律(フランクフルト)と冨安健洋(アヤックス)を抜擢。2019年アジアカップ(UAE)で攻守の主軸に据えると、同年6月のコパ・アメリカ(ブラジル)では板倉滉(アヤックス)、前田大然(セルティック)、久保建英(レアル・ソシエダ)、上田らを積極起用。彼らに国際経験を蓄積させ、個のレベルを引き上げようと努めたのだ。

 さらに2021年夏の東京五輪本番では、吉田麻也(LAギャラクシー)、遠藤航(リバプール)、酒井宏樹(オークランドFC)というA代表の骨格を担う面々をオーバーエイジで起用。彼らと東京世代の融合を図り、2022年カタールW杯の母体となる集団を形成。最初のW杯でドイツ、スペイン撃破という大きな成果につなげたのである。

 それを踏まえて再スタートを切った第2次体制で、森保監督は東京世代を軸に据えていった。同五輪に落選した菅原由勢(ブレーメン)、小川航基(NECナイメンヘン)、渡辺剛(フェイエノールト)が欧州での実績を武器にやや遅れて台頭。2021年時点では飛び級だった鈴木彩艶(パルマ)も大きく成長し、森保監督がよく知る面々がチームの土台を担うようになった。

 彼らへの絶対的信頼は、初戦・オランダ戦(ダラス)3日前に前キャプテン・遠藤が負傷離脱し、板倉滉(アヤックス)に後を任せたことでも色濃く感じられた。

「滉に託したのは、これまで長く一緒に戦ってきた仲間ですし、私がコンセプトとして掲げることをピッチ内外で理解し、彼自身が表現してくれること。かつ、彼のキャラとしていろんな選手とコミュニケーションを取りながらチームの雰囲気を作ってくれることを期待しました」と指揮官は説明。やはり「長く共闘してきた関係性」は揺るぎないものがあった。森保監督としても「東京世代とともに世界の頂点に立ちたい」という思いが非常に強かったことだろう。

 実際、東京世代は2018年からの8年間で、個のレベルを大きく引き上げた。三笘はイングランド・プレミアリーグで別格と言われる存在になり、上田もオランダ1部で得点王のタイトルを手にするまでになった。堂安は同じドイツ・ブンデスリーガの格上クラブにステップアップ。田中碧(リーズ)もドイツ・ブンデス2部からプレミア行きを叶えた。板倉と冨安はケガの影響もあって、この3年半の伸び率は想定よりも低かったかもしれないが、それ以外の選手を見ても、所属先やプレー環境は着実にレベルアップした。

 その成果は、オランダ、チュニジア、スウェーデンという強豪揃いのグループリーグで2位通過したことにもしっかりと表れた。

「当たり前かのようにグループリーグを突破できるようになったのは、間違いなく日本サッカーの発展だと思います。3試合通してしっかり勝ち点4以上を確保するという戦い方は、1試合に無我夢中でやっていた今までの日本代表とは少し違う。そこは成長かなと思います」と堂安も前向きに発言。上田が1試合2得点を叩き出し、前田も2大会連続ゴールを挙げるなど、前回大会経験者たちがいい仕事を見せたことも大きかった。

 だが、決勝トーナメント1回戦という日本サッカー界の長年のハードルは越えられなかった。ブラジルの老獪さの前に逆転負けしたという事実は、彼らの中に深いダメージとして残った様子だ。

「セカンドハーフの戦い方も踏まえて、まだ日本は強豪国と対等に渡り合えるレベルじゃないのかなと痛感させられた」と冨安が言えば、堂安も「ここでブラジルと当たって壁を乗り越えることが日本サッカー界にとって一番必要なものだと思っていたけど、それを乗り越えられなかったという感じが強い。力の差があったと思います」と苦渋の表情を浮かべていた。

 ガブリエウ・マルティネッリ(アーセナル)の逆転弾につながるボールロストをしてしまった田中碧も「自分は本気で優勝するチームに値するプレーヤーじゃなかっただけなんで。いろんな国の選手を見ても一回り二回り違うなと思うし、日本人には日本人のよさがありますけど、改めて個人としての能力はもっともっと上げていかないといけないなと。進むスピードを上げないといけないのかなと思います」と神妙な面持ちでコメントしていた。

 彼らは森保監督とともに長時間ともに歩み、日本代表チームとしての成熟度を引き上げ、世界最高レベルの規律や結束力を築き上げたのは間違いないが、またしても個のレベルという問題に行きついた。それは堂安の「この中で誰がブラジル代表に入れるのかと言ったら、『うーん』となった」という言葉にもよく表れている。厳しい言い方をすれば、それが彼らの世界における立ち位置であり、現状なのだ。

 今、20代後半の東京世代がここからもう一段階上のステージに辿り着けるかは未知数だが、それを成し遂げるしか、日本代表のさらなる進化はない。そう言っても過言ではない。

 さしあたって上田は今夏の欧州5大リーグ行きが有力視される。そこで絶対的エースになってくれれば、彼の言う「どんなに孤立するようなゲーム展開でも質の違いを見せて、自分がチャンスでもないようなシーンから1つもぎ取れるクオリティがある選手」に飛躍できるのだ。

 現地時間7月1日のDRコンゴ戦で強引に2点を取ってチームを勝たせたイングランドのハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)などはまさにそうだったが、突き抜けた個を持つ東京世代の選手が4年後に1人でも2人でも出てきてくれれば、日本は決勝トーナメント1回戦を突破できるのではないか。

「選手の寿命は長くなっていますし、実力的に言ったら今、今回選ばれた選手たちはたぶんこのまま残っていくんだろうなというくらいレベルが高い。僕の年下で確実に選ばれるのが誰かといったら、そこにいる選手(鈴木彩艶)くらいなんで」と久保が話した通り、やはり現状では東京世代に日本代表の今後が託されていると言える。彼らにはそれを今一度、自覚して、30代になる4年後に力強く向かっていってほしい。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



page 1/1

元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング